リスクとリターン
初めまして。あすなろコンプライアンス部の市丸和之と申します。私はバックオフィスのスタッフであり、通常はコラム等を執筆することはありませんが、本日は連休中ということもあり、特別にコンプライアンスに関するコラムを執筆させていただきます。
あすなろコンプライアンス部は、会社の災害対策からシステム障害、広告審査等、幅広い業務を担当しています。平たく言えば、弊社が遭遇する可能性のあるリスクをコントロールする部署です。その中でも会員様と最も接点がある業務は、アナリストレポート等の審査です。弊社では、コンプライアンス部の審査を通過していないレポートを会員様に提供することはできません。これは必須事項です。なぜなら、たとえそのアナリストレポートに素晴らしい投資アイデアが含まれていても、そのアイデアに明確な論拠がなければ、投資家にそのリスクを取らせるべきではないという行動規範があるからです。
では早速、コンプライアンス担当の私が、弊社アナリスト陣のレポートが上記の観点から適切かどうか審査していきましょう。今回は大きなテーマとして、以下の2つの項目を審査しました。
1. 小型株推奨・紹介
弊社アナリスト陣の小型株推奨は、明確な根拠がある適切なアドバイスなのでしょうか?
いわゆる小型株効果と呼ばれるアノマリー(市場のゆがみ)が、過去の日米の株式市場で見られたことが知られています。理由としては、ネグレクト効果(アナリストのカバレッジが薄く、割安に放置されている)などが挙げられますが、実際の日本株市場において小型株効果は存在したのでしょうか。
弊社が業務で使用しているQUICK(日本経済新聞社系情報ベンダー)の直近の調査によれば、日本株においても明らかな小型株効果が存在していることがわかりました。TOPIX(約1700銘柄)を時価総額で銘柄数を均等に5分位に分け(時価総額が大きいグループを第一分位、時価総額が小さいグループを第五分位とする)、各分位の銘柄を等ウエイトにし、月一回のリバランスを行い(相場の変動で時価総額の順番が変わるので銘柄を入れ替える)、1998年4月から2025年2月までのパフォーマンスを計測したところ、結果は以下のようになりました。
• 時価総額が大きい第一分位:累積リターン 329%
• 時価総額が小さい第五分位:同リターン 1100%
なんと小型株は大型株を771%もアウトパフォームしていたことがわかりました。日本株には明らかな小型株効果が存在していたことになります。弊社アナリスト陣の小型株推奨紹介は、それなりの根拠に基づいて推奨・紹介がされていることになりますので、コンプライアンス審査は問題なしと判断します。
2. 広く薄く横展開
社長の大石をはじめ、弊社アナリスト陣の会員様へのアドバイスによく出てくるキーワードです。属性が異なる幅広い業種に銘柄分散せよという意味になるでしょうが、これは顧客本位の観点から適切なアドバイスなのでしょうか?
リスク分散の理論的裏付けを見てみましょう。1990年にノーベル賞を受賞したウィリアム・シャープは、株式のリスクを以下のように分解し、株式のリスクには分散できないリスク(マーケットリスク)と分散できるリスク(個別銘柄リスク)があることを定量的に証明しました。(株式のリスク=ボラティリティ(変動率))
株式のリスク = マーケットリスク(システマティックリスク) + 個別銘柄リスク(非システマティックリスク)
マーケットリスクは、現実の相場に当てはめれば、TOPIXや日経平均のリスクと考えてください。マーケットリスクは、株式投資には必ずついてくる投資家が受容しなければならないリスクであり、分散化することはできません。一方、個別銘柄リスクは分散化が可能です。
例えば、銘柄間に相関がなければ、1銘柄を2銘柄にすればリスクは1/2に、3銘柄にすればリスク量は1/3になることが分かっています。会員様の中には、1銘柄で大儲けを狙いたいという方もいらっしゃるでしょうが、リスクの観点から「広く薄く横展開」の方が最終的に会員様のポートフォリオに付加価値をもたらすと弊社アナリスト陣は判断していると考えられます。
加えて、弊社アナリストは、分散できないマーケットリスクに対して「全体フォロー」という形で適宜情報提供しており、株式のリスクというものをよく理解しているようです。ということで、これもコンプライアンス審査は問題なしと判断します。
以上、比較的大きな視点からコンプライアンス審査を行ってみました。弊社アナリスト陣は、会員様に有望な銘柄を助言・紹介するのが仕事ですので、どうしてもリターン(儲け)の観点からマーケットや銘柄を語ることが多くなるでしょう(もちろん、リスクも十分考慮していますが)。
あすなろコンプライアンス部はアナリストとは真逆にリターンではなく、リスクから入ります。リスク重視の視点も、リターン追求と同じくらい大切なのです。社としてリスク・リターンのバランスを取ろうとしていることを皆様に知っていただければ、非常にありがたいです。
無料新着記事
-
社長大石のカウリス(153A)が短期S高!+32.53%UP!
あすなろレポート〈夜版〉
(2025/05/02 17:00)
-
昭和の情熱、平成の合理性、令和の創造性が相場をつくる
億男W直伝 勝利トレード攻略法
(2025/05/02 17:00)
-
Back to old school/バックトゥオールドスクール
木村泰章の機関投資家が読むコラム
(2025/05/02 17:00)
-
【必見】信頼できるチームの銘柄で大儲けと幸せを!
株ドクターマサトの投資家診療所
(2025/05/02 16:20)
-
この銘柄、まだ持っておらぬは下策ぞ
女株将軍アスナの「我に続け」
(2025/05/02 12:15)