チノー（6850）


温度制御と計測技術を基盤とするチノーは、エネルギー効率や製造精度の向上を支える重要企業とみている。計測制御機器、計装システム、センサの三本柱で構成され、なかでも水素関連機器の評価試験装置は、脱炭素社会に不可欠な技術インフラであろう。とりわけ水電解装置や燃料電池評価装置は、自動車産業や産業用設備での導入が進む分野であり、足元では大型案件の受注も続く。さらに、熱処理やセラミック製造などの高精度温度制御が求められる分野にも強みを持ち、顧客と密に連携したエンジニアリング力は競争優位性を高める源泉と考えられる。持続可能性と高度技術の融合がもたらす独自ポジションを評価したい。

2025年3月期決算では、売上高は前期比6.9％増の293億円、営業利益は同32.4％増の28億円と、いずれも過去最高を更新。計装システム部門では水素・燃料電池関連装置の需要が続伸し、収益を大きく押し上げた。計測制御機器やセンサ分野でも、半導体製造設備や船舶向けの需要が堅調で、増収増益の牽引役となったのであろう。特に営業利益率の改善が顕著であり、原材料費の高騰や人件費上昇といった逆風を販売価格の改定と原価低減でカバーしたことが功を奏したとみられる。2026年3月期も売上高は300億円、当期純利益は20億円と、中計目標を1年前倒しで達成する見込みとなっており、経営の確実性が際立つ。AIのXENOにおいても総合評価はB+と悪くない。

株価は2025年5月15日に一時2300円強を記録し、その後も緩やかな上昇トレンドを描いている。5月28日時点の終値は2250円であり、直近では2週間で10％以上の反発を見せており、過去の節目価格を上抜けた形である。信用残の動向を見ると過熱感は見られず、出来高も伴っており、需給は安定。特に2025年3月期決算の好内容と10円の増配発表を受け、長期保有を前提とした投資家の押し目買いが増えていると考えられる。テクニカル面では200日移動平均線を下支えに、今後も堅調な推移が期待される展開。中期的には3000円水準を意識した値動きに移行する可能性もあり、成長ストーリーと株主還元が市場に評価されつつあると分析できる。