先週末、米国で発表された5月の雇用統計について、市場関係者のコンセンサスは、「市場予想を上回る底堅さ」を示し、「景気減速への強い警戒感がひとまずは和らいだ」形、という見解で概ね一致しています。

米国株式市場は上向き、それを受けて本日の日本の株式市場も堅調な推移となっています。

一方で、景気の動向を敏感に示す農業分野以外の就業者は前の月から13.9万人増加したものの、4月の＋14.7万人から伸びは鈍化しており、さらには、3月、4月の数値は合計で-9.5万人下方修正された点を、懸念視する市場関係者も存在します。

6月では無く、9月と12月のFOMCでの0.25％ずつの利下げを見込む市場関係者が、従前よりも増加している模様です。

雇用統計を受けてトランプ大統領は、FRBに対して1％の利下げを行うよう求めた上で、「ロケット燃料になる！」として利下げが経済をさらに活性化させると主張しました。

FRBのパウエル議長は、2022年6月にバイデン大統領（当時）と会談し利上げを催促され、その月に事前ガイダンスを覆し異例の0.75％の大幅利上げを実施した経緯がある事から、6月にも小幅（0.25％が上限でしょう）な利下げを行って、目先のトランプ政権からの「口先介入」をかわす可能性もゼロでは無いように思います。

仮に小幅な利下げが行われたとしても、それは米国景気減速を意識しての利下げでは無く、「さらなる雇用創出を目論む」という「言い訳」も成り立つので、米国株式市場にとっても「中立」材料と見なされましょう。
加えて、米国の利下げにより、一時的にドル円が円高方向にブレる事はあっても、その動きも一過性かつ限定的と見ます。
ゆえに、為替水準変動があっても、株式市場にとっては大きな懸念材料とはなりえないように思います。

さて、米国カリフォルニア州ロスアンゼルス近郊では、移民政策に対する抗議デモに対し、トランプ大統領が派遣を指示した州兵2000人が投入されるという、異常事態となっています。
州の要請なしに大統領が州に州兵を派遣するのは1965年以来との事です。

あくまでも私見ですが、こうした「異常事態」との認識も、トランプ政権によるプロパガンダの一環と無縁とは言えない気がしています。
結局のところ、トランプ政権の意向を汲む方向で、FRBでさえも、「本意ではなくとも」なんらかの対応を迫られる可能性が高いように思う次第です。

「6月にも1回、0.25％の利下げを行っても、為替市場にも株式市場にも大きな影響は及ばない」との市場関係者の意見が増えれば、FRBは意外にもアッサリと、小幅な利下げに踏み切るのではないか、と考えておる次第です。



執筆：木村泰章

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