セルシス（3663）

イラスト・マンガ・アニメーション制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT（クリスタ）」を展開する企業である。全世界のクリエイターに愛用されており、事実上の業界標準（デファクトスタンダード）の地位を確立している点が最大の強みと見る。特筆すべきは、従来の「売り切り型」から、継続的に収益が発生する「サブスクリプション型」へのビジネスモデル転換に成功している点であろう。これにより、一度契約した顧客から安定的な収益が得られるストック型ビジネスの基盤が整いつつある。また、新たな成長エンジンとして、デジタルコンテンツの流通基盤ソリューション「DC3」の開発・提供にも注力しており、Web3時代を見据えた技術革新にも余念がない。国内だけでなく海外ユーザーの比率も高く、グローバルニッチトップとしての成長余地は依然として大きいと言えよう。

直近の決算においては、主力製品である「CLIP STUDIO PAINT」のサブスクリプション契約数が順調に積み上がっており、ARR（年間経常収益）の増加が鮮明である。サブスクリプション契約の純増数は堅調に推移しており、将来にわたる収益の予見性が高まっている点はポジティブに評価できよう。また、プロモーション費用の効率化やコストコントロールも進んでおり、営業利益率の改善傾向も見受けられる。円安基調が続く局面においては、海外売上比率の高い同社にとって為替差益が業績を押し上げる要因となる可能性も考えられる。さらに、株主還元策としての自社株買いや配当性向への意識も高く、資本効率の向上に向けた経営陣の姿勢は、投資家心理を支える材料となりそうだ。あくまで数字の表面的な変動だけでなく、質の高い「稼ぐ力」が強化されている点に注目したい。

11月中旬以降の調整局面を経て、足もとでは下値模索から底堅さを確認する動きへと変化している。日足チャートでは、上値を抑えていた25日移動平均線との乖離が縮小しており、同線を明確に上抜けることでトレンド転換の期待が高まりそうだ。ボリンジャーバンドでは－2σ付近まで売り込まれた後に反発を見せており、売られ過ぎの水準からの自律反発狙いの買いが入りやすい局面と言える。

一目均衡表においては、厚い雲の下に位置しているものの、遅行スパンが実線に接近しつつあり、好転の兆しを探る展開となろう。週足ベースでは長期間の調整により過熱感は完全に払拭されており、ここからの下値不安は限定的と見ることができる。オシレーター系指標のRSIも低水準から切り返しを見せており、売り一巡後の押し目買い意欲は旺盛であると推察される。75日線が控える水準までの戻りを試す展開が視野に入りつつある。