【東京五輪中止で大暴落】は本当か?
「オリンピックが中止になったら株価は暴落する」という、まことしやかな話が様々な報道やSNS等を駆け巡っておりますが、皆様、肝心な、最も理論的な観点をお忘れにならぬよう、ご注意くださいませ。
市場が一番嫌うのは、「リスク」です。
そして、ここで言うところの「リスク」とは、保有している株式の株価が下落して損害を被る「危険性」を指しているのではなく、
「リスク=不確実性」です。
株価が上がろうと下がろうと、市場のコンセンサスや過去の値動きから理論的に想定される価格からの「ブレ」や「乖離」こそが、「不確実性=リスク」であります。
この「リスク」を数値化したものが「ボラティリティ」です。
https://indexes.nikkei.co.jp/nkave/index/profile?idx=nk225vi
(日経ボラティリティー・インデックス)
もしも、市場がオリンピックの「中止」を「リスク」と受け止めているのであれば、当然ながらボラティリティは上昇するはずですが、過去6か月間の数値は概ね18~28の間で推移し、本日に至っては2%以上の低下となっております。
つまり、「中止」というキーワードは市場においては既に「リスク」として捉えられていないと申し上げても宜しいでしょう。
むしろ、「開催されるか中止になるか不明」という、「不明・不透明感」こそが「不確実性=リスク」と考えられます。
そのロジックに沿えば、「中止」が決まれば、「不確実性=リスク」がひとつ消える事になります。
「中止」を「売り」や「買い」という投資行動に直接・単純に結びつけるのは「妥当」であるとは思いませんが、敢えてどちらかと言えば、「リスク」が消えるのですから「買い」と考えるべきでしょう。
『株価は視界不良の不透明な時が一番売られる。中止と言う結論が出れば、空売りしている投資家の買い戻しも入る』というのが弊社の見解です。
下記のようなエビデンス(根拠)をご紹介しておきます。
・2020年3月24日に東京オリンピック・パラリンピックの1年延期が決定した翌日の日経平均株価は1454円高。
・島国である日本は、オリンピック中止により、変異型ウイルス侵入リスクを考えれば海外からの感染拡大が抑制される。
開催された場合の(イレギュラーな)コロナ感染再拡大リスクはなくなり、ワクチンの接種の進捗が進む。
買い材料として捉えられるだろう。(ヘッジファンド筋の一部からのヒアリング)
・コロナが収束しない間は政策面での金融緩和、景気対策(補助金、給付金)が継続するので株価は上がりやすい。(米国の、いわゆる「ロックダウンを聞いたら買え」の根拠)
いずれにしましても、東京オリンピック・パラリンピックの中止という話は、既に株価材料としては織り込み済みで、単体ニュースとしては暴落を引き起こす可能性はまずありえない、とお伝えしたいと思います。
執筆:木村泰章
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