続・東証市場区分変更:今のところ公募増資・売出しの動きは、さほど不安視しなくていいかも?
会員の皆様からのお問い合わせも多く、すっかりシリーズ化してしまいそうな東証市場区分変更ネタですが、本日は、株価下落懸念がありながらも、今のところ実はさほど怖がらなくても良さそうなケーススタディーとして、昨日発表されたルネサスエレクトロニクス(6723、以下ルネサス)と三菱総合研究所(3636)の公募増資・売出しのケースを取り上げます。
いずれも5月28日の取引終了後に発表が行われました。
・ルネサス(6723):公募増資+売出し
①公募による1億9641万7200株の新株発行⇒英国のアナログ半導体企業の買収資金に充当。
②INCJを売出人とする1億6707万8400株の売出し⇒投資家層の拡大や流動性の向上が見込む。
③上限673万1300株のオーバーアロットメントによる売出し⇒上記②と同様の目的。
⇒公募及び売出しによる希薄化は10.3%と試算される。
・三菱総合研究所(3636):売出し(持ち合い解消)
①キリンホールディングスなどを売出し人とする155万6600株の売出し
②20万株を上限とするオーバーアロットメントによる売出し
⇒いずれも株式の更なる流動性の向上を目指すことに加えて、多様な株主を迎え入れることを通じてガバナンスの一層の強化につなげることが目的。
売出し株数は最大で発行済み株式数の10.7%程度。
ルネサスは、昨日の市場で一時前日比7%安となりましたが、本日は前日比+3.32%と切り返しております。
同様に、三菱総合研究所も昨日は前日比で7%超安となりましたが、本日は前日比+1.79%と切り返しております。
ルネサスの増資部分については、希薄化懸念はあるものの、買収資金の捻出ですから、将来的な投資と見れば、中長期的にはポジティブ材料とも見受けられます。
しかしながら、同社の浮動株比率は現状1.6%と極端に低く、流動性面では、来春の東証市場区分変更の際のプライム市場要件に引っ掛かる事が懸念されていましたので、同時に売出しも実施して、流動性を高める努力をしているとアピールしたかったのでしょう。
更に深読みすれば、1回売出しに踏み切ったのであれば、第2弾売出しも有り得るかもしれませんし、その懸念をはやして、空売り筋が流入するかもしれません。
しかしながら、そうした短期調整も、あくまで短期のネガティブ要因であって、中長期の株価形成にはむしろポジティブと見て良いかと思います。
他方、三菱総合研究所も浮動株比率は8.8%と1ケタ%台です。
売出しの目的を、はっきりと流動性の向上及びガバナンス強化としていますので、明らかにプライム市場への移行を念頭においての売出しでしょう。
やや不思議なのは、三菱グループ会社株の売出しではなく、キリンはじめ持ち合い株の売出しとなっている点でしょうか。
その点をどう深読みするかで、同社株の今後の値動きに影響が出るかもしれませんが、今のところ、こちらも短期ネガティブ、中長期ポジティブという見方でよろしいかと存じます。
不確定要素だらけの東証市場区分変更ですが、今のところは、流動性面改善の為の売出し・増資の動きは未だ限定的です。
市場変更時の数値基準となる6月末に向け、売出し・増資の動きが加速・拡大するかを注意深く見守り、また皆様にご報告したいと存じます。
*注目銘柄として情報をご提供する事を目的としており、これらの銘柄に対して投資推奨する事を目的としたものではありません。
執筆:木村泰章
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