9月の内閣府「月例経済報告」にツッコミ
政府は9月の「月例経済報告」をまとめ、国内の景気全体の現状についての判断を「持ち直しの動きが続いているものの、このところそのテンポが弱まっている」と表現しました。
8月まで4か月連続で続いた「持ち直しの動きが続いてるものの一部で弱さが増している」、という表現と比較すると、「一部で弱さが増している」と「このところそのテンポが弱まっている」の違いは、「年初来安値じゃないけど直近の安値更新」と「安値圏」の違いくらいな感じでしょうか(笑)。
「弱さが増しているのは一部だけ」ならば「持ち直しのテンポ自体が弱まっている」のと、どっちが「悪い」のか判断がビミョ~なところです。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/2021/0916getsurei/main.pdf
8月報告と9月報告の個別事象比較をもう少し検証してみます。
【先行きについて】
8月:「持ち直しの動きが続くことが期待されるが、感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意する必要がある」
9月:「景気が持ち直していくことが期待される。ただし、内外の感染症の動向、サプライチェーンを通じた影響による下振れリスクの高まりに十分注意する必要がある」
⇒注目点としては、9月報告では、8月時の「感染拡大」以外に、「サプライチェーンを通じた影響による」下振れリスクが追加されています。政府見解に新たに「サプライチェーン」が追加で盛り込まれた事はややネガティブな印象です。
【個人消費】
8月:「サービス支出を中心に弱い動きとなっている」
9月:「弱い動きとなっている」
⇒これも難解ですね。
サービス支出は「中心」じゃなくなったのでしょうが、サービス支出以外にも弱い動きが広がったと解釈すべきなのか、弱かったサービス支出は、「中心」と特筆するほど弱くはなくなったと見るべきなのか、ビミョ~なところです。
【住宅建設】
8月:「底堅い動きとなっている」
9月:「このところ持ち直しの動きがみられる」
⇒印象的には9月の方が8月比で悪化してしまったように感じますが。。。
【企業金融】
「企業の資金繰り状況は改善しているものの、宿泊・飲食サービスなどでは依然厳しさがみられる」
⇒まぁ、想定内です。
【生産】
8月:「持ち直している」
9月:「このところ一部に弱さがみられるものの、持ち直している」
⇒これは9月の方が「悪化」と見るべきでしょう。
そこで、生産の先行きについてさらに見てみますと・・・
「感染症によるサプライチェーンへの影響及び半導体不足による影響、海外経済の下振れリスクに十分注意する必要がある」
⇒ここで、前掲の「サプライチェーン」に加え、「半導体不足」、「海外経済の下振れ」が「リスク」として示されています。中国発の「ショック」を受ける形で、景気敏感株として、真っ先に売りを浴びる事となった建機はじめ、機械、電気機器辺りの先行きは、市場の想定以上に低迷が長引くかもしれません。
【中国】
「景気は緩やかに回復している。2021年4-6月期のGDP成長率は、前年同期比で7.9%増となった。消費は持ち直しに足踏みがみられる。」
⇒世界の株式市場が、中国の規制強化、恒大の資金繰り問題、景況感の悪化に身構えている時に、なんとまぁ「ピントずれ」な見解なんでしょう。。。
そしてそして、最後に一番、あっけにとられたのが、内閣府ホームページの以下の部分。
「【予定】令和3年10月の公表予定日 : 未定」
何言ってるの!
毎月27日か28日あたりの公表が「お約束」でしょ?
これって、「11月初旬といわれている衆議院選挙を控え、月例経済報告なんて、やってるヒマございません」と言っているに等しいような気がするのは私だけでしょうか。。。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/getsurei-index.html
執筆:木村泰章
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