「定期観測:1月の工作機械受注統計(速報値)
「定期観測」の強みは、発表された数値だけを考察するのではなく、過去の経緯をも振り返って「比較」考察できる点でしょう。
会員様各位には、「また、機械受注速報かよ?」と思われてしまうやもしれませんが、
強気解説ばかりが目に付く1月数値を読み解くと、意外にも懸念事項も・・・。
定期観測している当コラムでしか成しえない着目点で会員様にご紹介申し上げます。
2月9日の取引終了後に、日本工作機械工業会から1月の工作機械受注統計(速報値)が発表されました。
https://www.jmtba.or.jp/wp-content/uploads/sokuhou2201ejkv.pdf
「1月の工作機械受注額(速報値)は前年同月比61.4%増の1430億円だった。15カ月連続で前年実績を上回った。データ通信量の増大を受けた活発な半導体投資を背景に、国内外で半導体製造装置向けに工作機械の引き合いが強まっている。」(2/9付 日経新聞より)
・・という解説がほとんどで、トーン的には「強気」ですが、私の見立ては若干違います。
前回12月の速報値は、「前年同月比」では依然高水準を維持しているものの、「前月比」ベースでは、受注総額・うち外需が共に2か月連続で減少していました。
ここが大幅にプラスに転じた、という点こそにまずは着目すべきでありましょう。
直近4か月の受注速報推移は下記のとおりです。
・受注総額:10月は前月比103.2%⇒11月は前月比97.4%⇒12月は前月比95.7%⇒1月は前月比102.8%に改善!
・うち外需:10月は前月比113.7%⇒11月は前月比96.6%⇒12月は前月比92.0%⇒1月は前月比112.2%に改善!
一方で、受注総額のうち内需は、12月が前月比102.7%であったのに対し⇒1月は前月比86.6%と大幅減です。
ここを解説しているベンダーや解説者は皆無という印象ですが、従前からサプライチェーンの滞りで部品調達難が指摘され、上がり続ける原油を筆頭に部材コストは上昇し、コロナ感染の拡大で国内でも工場稼働に必要な人手が確保できない、という状況が、日本国内にもじわっと及んでいるように感じます。
「判断に迷ったら株価に訊け!」
・ツガミ(6101):1月初旬の1700円台後半から1200円台半ばまで下落後、上掲速報の直後には一時的に切り返すも、やはり1300円台前半で停滞。
・牧野フライス(6135):1月初旬の4200円台前半から3500円台半ばまで下落後、上掲速報の直後には一時的に切り返すも、やはり3700円どころで停滞。
・日立建機(6305):親会社である日立が保有株の半分を売却という特殊事情で3000円割れまで下落、上掲速報の直後には一時的に切り返すも、結局3000円割れで停滞。
同様にコマツ(6301)も3000円が遠く、日本精工(6471)も750円~800円レンジに浮上できていません。
「親分」ファナック(6954)もしかりです。
つまり、仮に工作機械受注統計(速報値)が強くとも、株価はそれを織り込む動きになっていない、という事でありましょう。
「国内外で半導体製造装置向けに工作機械の引き合いが強まっている」というのは事実だと思いますが、引き合いが強くても、部品も無いし人手も無くて、結局製品売上につながらない、という懸念が未だ払しょくされていないのが現状なのかもしれません。
個人的には機械セクター全般には、常に強気目線を維持してきましたが、サプライチェーンの傷みは想定以上に深いのかも知れず、機械受注統計速報の数値だけで機械株全般に対する見方を強気、とするのはやや早計なように思います。
◎参考銘柄
・コマツ(6301)
・日立建機(6305)
・日本精工(6471)
・ツガミ(6101)
・牧野フライス製作所(6135)
執筆:木村泰章
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