どれくらい株価が下落したら大幅安なのか?Part.1
いえいえ、恥ずかしくなんか、ありませんよ。
なぜなら、「絶対的な定義は無く」、「個人個人の見解により差があり」、ゆえに「絶対的な正解も無い」からです。
つまり、「素朴な疑問」に対して「理論的にも正しい答え」を示せる人は存在しないのです。
例えば、会員様各位が最も歓迎するであろう「ストップ高」について考えてみましょう。
東京証券取引所では、一日の売買における値動きの幅を価格水準に応じて一定に制限しており、この値幅を「制限値幅」といいます。
ストップ高は「制限値幅」の「上限」です。
この「制限値幅」は、株価水準によって「値幅」が定められており、「値幅縛り」であって「変動率縛り」ではありません。
例えば、株価が100円~199円までの銘柄のストップ高は、前日比で50円高の水準と定められています。
前日の株価が100円ならば150円、199円ならば249円がストップ高となります。
それぞれのケースの「変動率」は、100円⇒150円が50%上昇であるのに、199円⇒249円はおよそ25%上昇に過ぎません。
同様に、前日の株価が1500円ならば1900円、1999円ならば2349円がストップ高となりますが、それぞれのケースの上昇率は、1500円⇒1900円は26.6%、1999円⇒2349円は17.5%です。
100円⇒150円の上昇率が50%である事と比べると、「幅」では無く「率」に着目した場合は「比較差異」が大きく開く事にお気付きでしょう。
一般的に、「大幅」という「概念」を理論的に説明する為には、その「ものさし」として、株価水準に基づく「幅」ではなく、「率」を用いた「相対比較」が必要となります。
言い換えれば、「率」を用いて「標準化」した比較が行われないと、「相対比較」としては通用しないわけです。
つまり、「100円高!」と言っても、前日の株価が500円だった銘柄が600円のストップ高に進むのと、前日の株価が8000円だった銘柄が8100円に進むのとでは、理論的な比較が叶わない事から、500円⇒600円の20%上昇と、8000円⇒8100円の1.25%上昇という「変動率」を比べて、どちらがより「大幅」な上昇と見るに相応しいかを判断する事になります。
ゆえに、「大幅上昇」した銘柄を検索する場合には、「値上がり幅ランキング」ではなく「値上がり率ランキング」こそが参考とされる傾向が強いわけですね。
しかも、「相対比較」の「対象」は、他銘柄に限られているわけではありません。
日経平均という株価指標との比較、同一銘柄の過去の株価推移との比較、他にも相対比較には様々な「対象」が考えられます。
例えば、本日の日経平均の「大幅安」については、市場関係者の誰もが共通認識として「大幅」と捉えたハズですが、
その「大幅」という根拠はかなり「感覚的」なもので、「1000円安したから大幅安」と考えられているに過ぎません。
昨日の終値38079.70円から、1000円安したから大幅安ではあるものの、下落率にすると2.6%程度です。
個別銘柄が2.6%下落した事を、「大幅安」と「感じる」人はさほど多くないハズですから、厳密に言えば、本日の日経平均は「大幅安」には該当しない「レベル」とも言えましょう。
ご参考までに、日経平均には値幅制限は存在しませんが、日経平均の派生商品である日経平均先物には値幅制限が存在します。
個別銘柄のストップ高安とは異なり、下記のように定義されています。
『中心限月取引において、制限値幅上限(下限)の値段で約定又は買(売)気配提示された場合、全限月取引の取引を10分間以上中断する。』
これは、『サーキット・ブレーカー制度』と呼ばれ、サーキット・ブレーカーの発動状況に応じて制限値幅は二段階まで拡大されます。
このサーキット・ブレーカーが発動される値幅制限が「8%」の上下変動です。
例えば、前日の終値が38000円だった日経平均先物が、8%下落して34960円に達すると、取引がいったん中止されます。
「率」ではなく「幅」に換算すると3040円。
つまり、日経平均が1日で3000円下落するならば「暴落」と見る事もできましょう。
2000年以降、日経平均先物が「暴落」して、サーキット・ブレーカーが発動された主な事例は下記のとおりです。
・2001/9/12:米国同時多発テロの翌日で米国内の取引が中止となり売り注文が殺到
・2008/10/10:リーマン・ショック
・2008/10/16:ダウ平均株価が史上2番目の下げ幅を記録し売り注文が殺到
・2011/3/15:前週末に発生した東日本大震災の影響
・2013/5/23:バーナンキ・ショック
・2016/6/24:ブレグジットの影響で売り注文が殺到
JPXのホームページには、日経平均先物以外でもサーキット・ブレーカーが発動された事例が公開されています。
https://www.jpx.co.jp/markets/derivatives/scb-info/index.html
明日のPart2に続く。
執筆者:木村泰章
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◆本日の下落率が1%未満と底堅かった個別銘柄のうち、特に内需型銘柄群。
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◆オリエンタルチエン(6380)
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