オカムラ食品工業（2938）

養殖・国内加工・海外加工・海外卸売の4事業を軸とした水産食品企業である。特筆すべきは国内サーモントラウト養殖の大規模展開であり、2030年には養殖キャパシティを1万2000トンまで引き上げる計画が注目される。同社の強みは上流の養殖から下流の加工・卸売まで一貫したサプライチェーンを構築している点にあろう。アジア圏における日本食レストラン数は過去10年で約3倍の12万2000店に拡大しており、この旺盛な需要を背景に海外卸売事業が急成長を遂げている。デンマーク現地法人での養殖事業も展開し、国内外での供給体制強化が期待できる構図だ。

第3四半期決算は売上高253億円と前年同期を約11%上回り、営業利益も22億円と2割を超える成長を達成した。特に海外卸売事業の売上が86億円と前年同期から23億円の大幅増となり、円安の恩恵も受けて収益拡大に大きく寄与している。今通期の業績予想では売上高361億円（10.6%増）、営業利益32億円（26.1%増）と力強い成長が見込まれる状況だ。魚卵相場の上昇局面において、相対的に安価な自社製品の競争力が発揮されており、市況変動を収益機会に転換できる事業構造が強みと言える。中間養殖施設の増設により、今期及び来期以降の水揚げ量増加も期待される展開である。

株価は現在1100円台で推移し、時価総額は568億円となっている。年初来高値1333円から調整局面を経て、足元では底堅い動きを見せている。テクニカル面では25日線と5日線のゴールデンクロス形成が期待される水準にあり、週足の一目均衡表では雲上限突破による上昇シグナルが点灯している。6/20に開けた窓が調整で埋まってしまったものの、直近では窓埋めの展開がみられ、需給の改善も見込まれる。ボリンジャーバンドの-1σを支持線とした展開が続けば、ミッドバンド（25日線）接近による上値追いも視野に入ろう。信用倍率0.77倍と信用需給面での過熱感は限定的であり、押し目買いスタンスが有効と見る。