テンバガーは現実に実現可能な事象か?
まず簡単に私のバックグラウンドを紹介します。私は20年以上前に証券アナリスト検定(CMA)を取得しました。この資格は、市場の仕組みや金融理論を理解するうえで有用であり、メディア報道に流されず自ら分析・判断する思考回路を培うきっかけとなりました(ただし、銘柄の将来を確実に予測できるようになるわけではありません)。
あすなろコンプライアンス部では、アナリストの推奨根拠をメディア報道だけに頼らず、自らデータを用いて検証することを基本としています。今回、業務で利用しているQUICKのデータを用い、2025年10月10日現在のプライム、スタンダード、グロース計3,786銘柄について、過去に遡って「テンバガー」がどの程度発生しているかを検証しました。検証にあたっては対象期間をどう設定するかが重要です。一般にメディアでは日経平均が使われることが多く、2008年のリーマンショック以降を区切りにすることが多いですが、指数の性格や連続性の問題から、本検証ではTOPIXを基準とし、3党合意による消費増税衆院通過(12年6月)を日本株の底として、下記の条件で集計しています。
• 期間:2012年6月1日~2025年10月10日
• 方法:期間中に「高値÷安値」が10倍以上になった銘柄をカウント(安値日付<高値日付を条件とする。倍率は小数点第1位で四捨五入 )
結果(要約)
• 対象銘柄数:3,786(プライム・スタンダード・グロース合計)
• テンバガー達成銘柄数:690銘柄(全体の18.23%)
o プライム:391(10.33%)
o スタンダード:249(6.58%)
o グロース:50(1.32%)
プライムの内訳(時価総額区分)では、小型が多数を占めています。具体的にはプライム391銘柄のうち、小型が246銘柄(63%)、中型105銘柄(27%)、大型32銘柄(8%)、属性なし(2%)でした。これは、当該期間において小型株がテンバガーになりやすい傾向を示しています。
その他の統計値は次の通りです(代表例):
• 最大倍率:349倍(レーザーテック 6920、達成日数:2,894営業日)
• 平均倍率:22倍(集計上の算術平均)
• 最短達成:19倍(アサカ理研 5724、達成日数:19日)
• 最長達成:16倍(荏原 6361、達成日数:3,250日)
• 平均達成日数:1,990営業日
以上から、本検証では約5.5銘柄に1銘柄がテンバガーになっていることが確認できました。ただし本集計は現時点の上場銘柄のみを対象として過去へ遡る方法を採用しているため、途中で上場廃止やM&Aにより市場から消えた銘柄はカウントされておらず、過小評価の可能性があります(例:東芝 6502 等23年12月上場廃止)。弊社は保守的な観点から今回の方法をあえて採用していますが、実際のテンバガー発生頻度は本調査より高い可能性がある点をご留意ください。
結論として、弊社アナリストが比較的小型株をテンバガー候補として推奨・紹介している行為は、今回の検証結果と整合しています。ただし、外向けの表現やメルマガでは「確実性」を示唆する断定表現を避け、定義・母集団の取り扱い等を明示したうえで結果を提示することが必要です。
あすなろコンプライアンス部は今後も自らエビデンスを検証し、フロント(アナリスト業務)と連携しながら、パフォーマンス評価とリスク管理を厳格に行ってまいります。アナリストが銘柄発掘に専念できるよう、バックオフィスとしての役割を果たしていく所存です。
以上
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