元外資系金融マンのこぼれ話 「ギャンブルと株式投資」
今週もお取り組みお疲れ様です。
今週は大きなイベントも通過して市場にとっては非常に意味深い一週間となりました。
メジャーSQ後のポジション調整後は物色対象も変化して、
中小型株も大きく値上がりする銘柄が相次ぎましたし、
主力株は調整後に切り返す動きを見せて先週の高値にまで迫りました。
最近ご好評いただいている【プレミアムメール】の会員様も
大変お喜びいただいて何よりです。
株式投資というと“今”の時代になっても「ギャンブル」と一緒でしょ?
という先入観が蔓延しているのは残念なことですが、
やはり日本人にとっては“バブル”の後遺症が根深く残っているという致し方ない面は
あるのかと思います。
今週は「カジノ法案」もスピード成立にこぎつけたということで、
そもそもの“ギャンブル”について考えてみたいと思います。
株式投資に外せない考え方として【ポートフォリオ理論】というものがありますね。
銘柄を分散して相関関係をおさえながら安定した収益をめざす。
ザックリ言うとこんなイメージです。
実はギャンブルでもこの分散効果と相関効果をうまく活かして確実に儲ける方法が存在します。
それはギャンブルの場を提供している“胴元”です。
まず、大前提としてギャンブルと投資はまったく異なる概念で、
そもそも期待収益の基本構造が違います。
投資はハイリスク・ハイリターン(リスクが高ければリターンも高い、リスクが低ければリターンも低い)が原則ですが、ギャンブルの世界は基本的にハイリスク・ローリターンです。
競馬にしてもカジノのルーレットにしてもパチンコにしても、
ギャンブルは期待リターンがマイナスであり、胴元が必ず儲かる仕組みになっています。
つまり、あなたが損することが最初から決まっている取引なのです。
宝くじの期待リターンに至ってはマイナス50%であり、これは競馬(マイナス30%)と比べても、
とんでもなくあこぎな商売と言えます。世の中のイメージとずいぶん違いますよね。
期待リターンがマイナスということは、借金をして高いリスクをとっても、期待リターンを高めるレバレッジ効果が働かないことを意味します。
むしろ、期待リターン(というかむしろ期待損失)はどんどん悪化し、ハイリスク・ハイネガティブリターンになるというわけです。
なぜ負けることがわかっているギャンブルに、人はのめり込むのか?
人間はリスクを回避しようとする生き物ではないのか?
これは、オーソドックスなファイナンス理論に認知科学を掛け合わせた行動ファイナンスという学問分野が取り組んでいる問題です。
以前、こぼれ話の前身の「銘柄アカデミー」でもこのプロスペクト理論を取り上げましたが、
人間は一定のリターンが明確に見込めるときには、リターンを失うことになるリスクを回避しようとします。
すなわち、マイナスを目の前にすると、人間は損失そのものを回避するために、進んでリスク愛好家になるという特性があるのです。
例題を考えてみましょう。
これはノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンという人が明らかにしたものです。
【問題A】
100万円を差し上げます。次のどちらかを選んでください。
(1)当たれば200万円もらえるくじを引く(当選率50%)。ただし、外れたら100万円も没収
(2)くじを引かずに帰宅する
【問題B】
いま100万円の借金があります。次のどちらかを選んでください。
(1)当たれば借金がチャラになるくじを引く(当選率50%)。ただし、外れたら借金は200万円に
(2)くじを引かずに帰宅する
問題Aでは迷わず(2)を選んでリスクを回避したがる慎重な人も、
問題Bではギャンブル性の高い(1)を選んでしまうことがわかっている。
つまり、人は一度借金をしたり、損をしたりすると、さらなる損失に対する感応度が鈍くなり、高いリスクをとるようになってしまうわけだ。
これをふまえて、先ほどのギャンブルに当てはめますと、
期待リターンがマイナス30%の競馬にのめり込んだとしましょう。
もちろん一獲千金の万馬券も狙えるが、何回もやればやるほどポートフォリオの分散効果が働き、実際の収益は期待リターン(期待損失)であるマイナス30%に収束していくようになります。
ギャンブルというのは、やればやるほど分散効果が仇となり、【確実に損をする】基本構造になっているのです。
さらにつけ加えれば、ギャンブル用の資金調達をしようとすれば、高金利の消費者金融ぐらいしか窓口がないですよね。つまり、資金の調達コストもかさむわけです。
これらを考え合わせると、借金をしてギャンブルにのめり込むことほど愚かなことはない、というのがファイナンス理論の結論となります。
他人資本での(レバレッジをかけた)ギャンブルとは、「負ける」ためのすべての要素を理想的に組み合わせた「最強の愚行」と言えます。
ここでポートフォリオ理論に戻ります。
胴元たちにとってみれば、ギャンブルの参加者というのは、一定のキャッシュフローを生み出す株式銘柄たちに等しくなります。
ギャンブルの参加者が増えれば増えるほど、分散効果と相関効果が働くということですね。
だからギャンブルの胴元がやるべきことは、自分の期待リターンをプラスに維持しながら、なるべく多様な参加者を集めてリスクだけを下げて、確実に儲けられる状態を保つことと言えます。
裏を返せば、この胴元にとって最も恐ろしいのは、分散効果や相関効果が生まれない客である。
たとえば、ほかの参加者の何倍もの金額を賭けてくる大金持ち(分散効果が効かなくなる)とか、
ルーレットゲームで赤にしか賭けない大所帯の団体客(相関効果が効かなくなる)は、
リスク低減効果を妨げる邪魔者以外の何者でもないということになります。
以上からわかるとおり、市場のすべての銘柄を組み合わせた「マーケット・ポートフォリオ」への投資というのは、絶対に負けないカジノの胴元の立場に立つことに等しいと言ってよいでしょう。
じゃあ、投資信託がまさに理想の金融商品じゃないか!!
ということになりそうですが、
残念ながら日本の金融商品でそのような商品は存在しないのです。
それをふまえると、
株式投資というものを考える時にはこの分散効果を最大化する努力が必要ということです。
つまりは【取り組み方】を工夫するということになるのです。
皆さんがよく知る【銘柄の分散】だけでは不十分です。
狙っている銘柄を買う時の【時間を分散】したり、【株数を分散】したり。
極めて手間のかかる作業ですが、結果的に『効率よく儲けて、資産を増やす』という目的がある以上、
それが最も理に適っている“やり方”と言えるのです。
株式投資をギャンブルと同じにしないためにも、ちょっとした工夫を取り入れてみませんか?
カジノ法案が成立して、関連する銘柄の問い合わせを数多くいただきましたが、
どうやら市場反応は一旦の材料出尽くしで売りとなっていますね。
どこまで下落すれば落ち着くのかは分かりませんが、
ただの思惑だけでなく他に事業を持っている銘柄は下がりませんでしたね。
鹿島(1812)
フジ・メディアHD(4676)
リゾートトラスト(4681)
アクセル(6730)
EIZO(6737)
日本空港ビルディング(9706)
ロイヤルホテル(9713)
セコム(9735)
【 相 場 の 格 言 】
『相場師の最大の敵は自分であって相手ではない』
それでは、また会員様の喜びの声が聞けることを楽しみにしています。
執筆:加藤あきら
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