個人投資家の皆様に単体空売りをお勧めしないわけ
実際のところ、「ショートで大儲けした」という話は株に限らず、
市況商品モノ等でも過去の「武勇伝」について、「伝説のショート」のように紹介されているケースが散見されます。
ショート戦略がワークした時の「稼ぎ」の方が、ロング戦略がワークした時のそれより大きいという話は、話題性としては面白いのですが、果たして個人投資家にとってショート戦略は、理論的、実践的なのでしょうか?
最初から答えを申し上げてしまいますと、理論的に「アリ」、実践的には「NO」です。
理由は明確で、2つのみです。
「割高な銘柄を見つける事は割安な銘柄を見つける事よりもはるかに難しい」という点と、
「ショートのヤラレは青天井なので投資資金が豊富になければ危険なうえにワークしない」という点です。
割安な銘柄に関しては「単体」であっても、業績面や将来性についての「数字」の積み上げで、ある程度のフェアバリュー、もしくは「理論株価」を試算し、割安である事の検証が可能ですが、
割高な銘柄に関しては、「何と比較して割高」であるのかについて検証する必要が不可欠で、実際にショートする銘柄のフェアバリュー試算に加え、比較対象となる銘柄のフェアバリュー試算も必要であるため、「不確実性」というリスク要素が増えてしまう事となります。
詳しいスキームをご披露するのは控えますが、私の知人には、運用会社で「ショート専用ファンド」を、大口投資家(個人含む)向けにカスタムメイド(つまり組成)しているアセットマネージャーが少数ながら存在します。
言い換えますと「ショート戦略のみで運用するファンド」という事です。
2020年度のパフォーマンスはさすがに厳しく、資金流出が続き、「箱」だけが残っている状態と聞きます。となるとファンドを維持する為のコストも重しとなり、結局はファンドの閉鎖という可能性が濃厚です。
皆様の眼で実際にチャートでご確認いただければ幸いですが、例えば皆様がお使いになられている情報ベンダーの機能で、是非、2020年のコマツ(6301)と日立建機(6305)の値動き(日足)のチャートを比較してみてください。
私が2銘柄間のスプレッドが拡大している事に気付いたのは8月の終わり。
その際に私が、ロングオンリー(空売り無し)の運用体と個人投資家の皆様にご助言申し上げたのは「コマツの買い」です。
日立建機株の強い値動きは、コマツ株との比較では割高でありながら、その後も2か月近く日立建機の株価は高値もみ合いを続けます。
結果的には、日立建機のショート「のみ」であれば、大きな利益を享受できたわけですが、
それでも2銘柄間の拡大し続けたスプレッドが、日立建機の暴落というカタチで修正されるまで、実に2か月以上かかっている事がご確認いただけるものと存じます。
その2か月以上の間、日立建機が上昇し続ける恐怖感に耐えうるリスク許容度と、ショートポジションをホールドもしくは売り増しできる資金の余裕が、双方ともに備わっている個人投資家はほんのひと握りかと考える次第です。
株式投資のご経験が長い方々ほど、ショート戦略に興味をお持ちのケースが多いように思いますが、割高感の判断を1銘柄単体で検証する事は非常にリスクが高く、かつ、個別株の割高/割安ペアトレードには資金的余裕という制限を受けがちで、マーケットニュートラル戦略での個別株ロング/指数先物ショートというロングショートは、近年、ワークしづらくなっている点を是非ともご理解いただきたいと存じます。
ロング/ショートについては、後日あらためて取り上げたいと思いますので、引き続き宜しくお願い致します。
皆様よい週末を!
執筆:木村泰章
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