株式会社あすなろ 関東財務局長(金商) 第686号 一般社団法人 日本投資顧問業協会 第011-1393

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あすなろ投資顧問

2021-04-19 17:00:00

アナリスト木村の銘柄研究部

相場を注視すれば儲け話は転がってる(かも):ソフトバンク大口買い注文

本日の市場では、通信のソフトバンク(9434)に大口買い注文が入った事が話題となっておりました。
午前中は1430円の指値で240万株の買い(約34億円相当)、取り消される事無く午後には1440円、さらには1443円、1445円、1450円と値上げされた事から「自社株買い」であろうと推測されています。

しかしながら、この発注方法が市場関係者の間で波紋を呼んでいます。
いわく、「公正健全な価格形成を妨げる取引」に該当するのではないか?という事です。
いわゆる「相場操縦的行為」疑惑です。

では、「相場操縦的行為」とされるうちの、「どれ」に抵触する恐れがあるか、皆様はおわかりでしょうか?

「自社株買い」であれば、売買自体を成立させる「意図」がないわけでなく、かつ今回は、発注・取消・訂正を頻繁に繰り返しているわけではありませんので、「見せ玉」に該当する可能性は無さそうです。
意図する価格に固定することを目的として、一定の株価で上昇・下落を抑える意図が見受けられる取引ではないので、「株価固定」にも該当しないでしょう。

禁止行為に抵触するのではないかと市場内で噂されていたのは「作為的相場形成」です。
もちろん、「自社株買い」という目的自体は「作為的相場形成」に該当しませんが、その発注方法や取引手法については、他の投資家の取引を誘引する目的がなかったとしても、
取引の状況からみて実勢を反映しない相場を作為的に形成したものと客観的に認められてしまえば、「クロ」となります。

もうちょっと深読みしてみましょう。

当該指値を、本日のザラ場中に「取り消し」してしまうと、上述の「見せ玉」に抵触してしまう可能性が在る為、取り消しするという選択肢は考えにくいと言えます。
残る選択肢は、本日中に発注した株数を「買い切る」か否かですが、買い切りを目指して徐々に指値を切り上げてゆくと、今度は「買い上がり」という禁止行為に抵触する可能性が出てきます。
これは、価格を意図的に高く又は安くする事で、あたかも相場が上昇又は下降していると他の投資家に誤解させ、取引を誘引することを目的とする行為を言います。
「意図的」ではないにせよ、「取引を誘引」してしまう可能性があれば、これも「相場操縦的行為」に該当してしまう可能性があります。

さらには、買い切れなかった株数を、明日以降の市場で本日同様に大口発注すると、今度は「株価固定」疑惑の可能性も出てきます。
買い切るタイミングが大引けに近付けば近付くほど、「終値関与」も疑われましょう。

以上を考えると、一度大口発注してしまった限りは、なるべく早めに市場で買い切る以外には、禁止行為抵触疑惑を完全回避する選択肢はほとんどありません。
ディーラー達は本日の後場、「買い切り」を見越して先回り買いを入れたでしょうから、当該注文は結果的に「取引を誘引」した旨お咎めを受ける可能性は残り、いずれにせよ、このような執行方法を選択した、許容した、証券会社の売買執行担当者は、執行に関して「妥当」な判断をしたとは言えないでしょう。

結局、14時半前に、当該注文は1450円まで指値を引き上げられて、240万株すべてを「買い切り」ました。
後場に1440円に値上げされた時点で「買い切り」を見越し、1441円を1万株買っておけば、労せず10万円近いトレーディング益が実現できた事になります。
相場を注視して、イレギュラーな発注を発見し、日計りトレーディングする事も、未だにそこそこ有効な投資手法である事を実感させられる出来事だったように思います。

米国の長期金利上昇も一服しておりますので、金融株の長めの買い持ちは禁物でしょう。
こじつけがましくて恐縮ですが、利食える証券株や銀行株は全て利食っておくべきかと存じます。

大和証券グループ本社(8601)
マネックスグループ(8698)
SBIホールディングス(8473)



執筆:木村泰章

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