株式会社あすなろ 関東財務局長(金商) 第686号 一般社団法人 日本投資顧問業協会 第011-1393

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あすなろ投資顧問

2021-05-22 09:00:00

アナリスト木村の銘柄研究部

個人投資家に暗号資産投資をお勧めしないわけ

週末・休日版コラムでは、銘柄や相場や経済についての直接的な話ではなく、むしろ、そこから離れたところからの目線で、しかしながら、結局最後は株式投資にもつながるような話もご披露したいと存じます。
かなりくだけた内容ですが、週末・休日版という事でご了承いただき、お付き合いください。

5月第3週、第4週は株式相場が大幅下落を経て不安定な展開となりましたが、その「複合要因」のひとつとして挙げられるのが、暗号資産の大幅下落です。

・テスラCEOが購入時のビットコインを利用した支払い方法を取り止めるとツイッターで発言。
・中国は銀行や決済会社が仮想通貨取引に関連するサービスを提供することを禁止、さらに投資家に対して投機的な仮想通貨取引を禁止すると警告。
・ビットコインは、19日午前(米東部時間)に24時間で19%急落し、35000ドル近辺まで売られる。
・米通貨監督庁は、過去1年間で発表した暗号資産関連の指導(ガイダンス)を再検討すると発表。

そもそも「投資」ではなく「投機」であろうという議論については、またの機会にお話させていただくとして、私が個人的に、個人投資家の方々に対して暗号資産投資をお勧めしない理由の根幹は下記2点です。

『バリュエーションを計測する事も比較する事もできない』
『バリュエーションを計測する事も比較する事もできない対象に、自分自身が決して投資を行わない』

株式投資の際には様々な視点や尺度に基づいて「理論的に」「相対的に」バリュエーションを計測・比較する事が可能です。
個人的には、特に他の投資対象との「比較」という面が大切であると考えています。

一方で、暗号資産投資にはバリュエーションという概念自体が存在しません。
主に「外部要因」を頼りに投資判断せねばならず、暗号資産同志の比較も理論的でなく、かつ、暗号資産と実物資産との比較も困難ですし、暗号資産と株式の比較も無理ですね。

一方で、「理論的」では無いにしても、「感覚的」な比較による投資判断は可能です。
例えば、6万ドルのビットコインを、更なる上昇を見越して買うのと、上場来高値となっているトヨタ自動車株のどちらを買うかという単純比較です。

しかしながら、この場合の比較の「基準対象」となるのは、ビットコインにバリュエーションという概念が無いので、「リスクとリターン」を比較する事となります。

この「リスク」に関する「定義」を個人投資家の方々がしっかり理解していると思えない事も、私が個人的に暗号資産投資をお勧めしない理由のひとつです。

『リスク=不確実性」

価格が下落して損失を被る「危険」がリスクなのではなく、
価格が下落しても上昇しても、自身が理論的根拠に基づいて推察する価格、もしくは過去の価格の動きから想定される価格から、乖離したりブレたりする「不確実性」こそがリスクとされるわけです。

「リターン」に関しては、往々にして思惑優先になってしまいがちで、個人的にはその点は投資対象が暗号資産でも株式でも大差ないようにも思いますので、ここでは触れませんが、ビットコインとトヨタ株のいずれが「リスクが高く」、対する「リターンも高い」かは議論するまでも無いでしょう。
投資対象として「妥当」であるのは、例えリターンが低くても不確実性が低いトヨタ株、という事になりましょう。

さらに乱暴な言い方をすれば、バリュエーションという概念が存在しない対象物には、リスクが、不確実性が、絶対的に高いと評価する「ものさし」さえ存在しないように思います。

暗号資産に限らず、バリュエーションの計測も比較もできない対象に、「状況証拠」ばかりの「外部要因」だけを頼りに、大切な資産を投資する事は、お控えいただく方が無難だとお伝え致します。



執筆:木村泰章

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