株式会社あすなろ 関東財務局長(金商) 第686号 一般社団法人 日本投資顧問業協会 第011-1393

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あすなろ投資顧問

2021-07-17 09:00:00

アナリスト木村の銘柄研究部

REIT指数の上昇は株式市場の下落を示唆しているのか?

週末・休日版コラムでは、銘柄や相場や経済についての直接的な話ではなく、むしろ、そこから離れたところからの目線で、しかしながら、結局最後は株式投資にもつながるような話もご披露したいと存じます。
かなりくだけた内容ですが、週末・休日版という事でご了承いただき、お付き合いください。

金利が下がると株価は上がり、金利が上がると株価は下がる傾向があります。
当然ながら、株価が下がれば概ね株価指数も下がる事となります。
「いろは」の「い」ですね。

会員の皆様、こんなニュースをご覧になられた事があるのではないでしょうか?
『米10年物国債の価格が上昇し、利回りは低下。それを受けて利回りの高い他の金融商品を買い求める「利回り狩り」の動きが強まり、分配金利回りの高いREITに買いが集まった』
『株式市場の膠着感の一方で東証REIT指数は上昇が続く』

REITは「上場不動産投資信託」ですが、金利の動向が直接ファンドの収益を左右する事はありません。
言い換えると、金利が上昇してもREITの収益性がアップする事に繋がるわけではありません。
むしろ、金利が上昇すればREITにとっては金利の支払い負担が増えますので、REITの「期待リターン」のうち、特に分配金にとってはマイナス要因となります。
REITへの投資の魅力は「高い分配金利回り」にこそあるのですから、金利が上がればREITの価格自体は下がる傾向が強いと言えましょう。

一旦まとめます。
・金利が下がると株価は上がり、金利が上がると株価は下がる傾向がある。
・金利が下がるとREITは上がり、金利が上がるとREITは下がる傾向がある。

しかしながら、今日では、REITは金利上昇局面でも「強い」、金利上昇局面でもREITに対する投資は「有効」である、という論調が増えつつあります。
▼コーヘン&スティアーズのレポート:米国REITはインフレ・ヘッジとしても有効な資産と紹介
https://www.cohenandsteers.com/jp/insights/read/VP621JP
▼三井住友トラストアセットマネジメントのレポート:金利動向がJ-REIT市場にマイナスの影響を及ぼす可能性は限定的と説明
https://www.smtam.jp/report_column/pdf/cat_22/HPJ-REITJ-REIT2103.pdf

一方で、株式市場とREIT市場の相関性については、「逆相関」と考えるのが今なお一般的です。
上でまとめたように、金利動向と株式市場、金利動向とREIT市場は、同じ動き・傾向となるはずですが、実際は株式市場が活況であれば、REIT市場に対する投資が手控えられ、株式市場の騰勢が弱まれば、REITに資金が回る傾向が見られます。
このロジックに従えば、上がり続ける東証REIT指数は、逆説的に株式市場の下落を示唆している事にもなりえましょう。

「キャピタルゲイン=値上がり益」と「インカムゲイン=利回り益」の関係、
「グロース株」と「バリュー株」、「株式」と「REIT」、どれを取っても「逆相関」とお考えになる方々が今なお多い事と思われますが、実は、そもそも、その「思い込み」こそが理論的ではないように感じる次第です。
「傾向」を基に「資金移動」の「方向性」「だけ」を予測する際には、「逆相関」は充分理論的であっても、「資金移動」を「想定していない」、もしくは「資金移動」が「難しい」、さらには「資金移動」を「望まない」投資資金も、株式市場には流入・滞留しています。

私は個人的に、膨大な資金を運用している機関投資家等でない限り、金融商品間の「資金ローテーション」を考える「必要もなく」、かつ、「資金ローテーション」を予測した投資行動を取る事にも「限界がある」と考えております。
かなり乱暴な申し上げ方で恐縮ではございますが、投資対象金融商品や投資手法間の相関・逆相関を予測する事は、個人投資家の株式投資にとっては、「誤解・誤認」を生んでしまう可能性があるからこそ、「要らない情報」であるようにさえ考える次第です。

最後に言い切ってしまいますが、東証REIT指数が上昇し続ける事は、確かに日本の株式市場の閉塞感を「示唆」しているようには思いますが、「ゆえに株は上がらない」のでも「ゆえに株は売り」なのでもありません。
全ての投資家が、「キャピタルゲイン=値上がり益」こそを狙っているわけではないのです。
同様に「インカムゲイン=利回り益」を狙っている投資家の全てが、キャピタルゲインに「興味が無い」わけでもありません。
「リスク許容度」や「時間軸」や「期待リターンの規模や種類」は千差万別であるからこそ、唯一絶対の正解が無いのが投資の常です。
「会員様の株式投資には直接的に必要の無い」情報に惑わされずに、株式投資にお取り組みいただきたいと存じます。



執筆者:木村泰章

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