株式会社あすなろ 関東財務局長(金商) 第686号 一般社団法人 日本投資顧問業協会 第011-1393

(一社) 人工知能学会:18801(公社)日本証券アナリスト協会:01159

あすなろ投資顧問

2016-05-07 09:00:00

銘柄アカデミー あすなろ校

コラム「銘柄アカデミー あすなろ校」Vol.5 〜日銀の金融政策と銀行再編の思惑〜

コラム「銘柄アカデミー あすなろ校」Vol.5
〜日銀の金融政策と銀行再編の思惑〜


4月28日の日銀金融政策決定会合で「追加緩和の見送り」が報じられた後場は、17,500円台に乗せていた日経平均が16,700円に、円ドルレートは111円半ばから4円切り下げた水準まで売り込まれる事態となりました。市場の期待が高まっていた中でのネガティブサプライズで日銀の市場との対話姿勢を疑問視する声も少なくありません。

海外投資家は株式の売り買いの判断をする際に、市場の大きな流れを決定づける可能性がある「投資アイデア」を重要視しています。例えば当顧問でも度々お伝えしていますが、「円高耐性のある内需株」というように単純明快な戦略が『バイオ株祭り』といえる前半の市場の動きに乗りました。一方で、市場全体で見た場合、海外投資家の動向は2016年の年明けから4月中旬までの株式売り越し額は5兆3,000億円規模となり、2015年の年間売買動向は2,600億円の買い越しであったことをふまえるとパフォーマンス低下が著しくなったことを端的に表しています。海外投資家の文字通りの「日本売り」姿勢はどこに起因するのでしょうか。

海外市場と比較しますと、依然として中国危機や原油安の根源的問題はあるものの、円高進行を背景とする日本株の一人負けは本来の企業価値からも遠くかけ離れています。現在の為替水準や日銀の金融政策を裏付ける複合的要因は様々に分析されています。

その一つとして4月29日に米財務省が発表した為替報告書において日本の為替操作国「監視リスト」入りが話題となっています。そもそもは米国が1988年〜1993年にかけて中国・韓国・台湾を「為替操作国」として認定していましたが、1994年以降は解除されました。10年以上の時を経てこのような措置を持ち出し、新たに日本・ドイツを加えて5か国としたのにはとても違和感を覚えます。

米国の恣意性を多く含んだ内容は?対米貿易赤字200億ドル以上、?経常黒字がGDP比3%以上、?為替介入がGDP比2%超と設定され、これらすべてに抵触した場合は「為替操作国」と認定し制裁発動するというものです。一方的な米国のアナウンスがどれほどの効果を持つのかは疑問ですが、2月に上海で開かれたG20でも通貨切り下げを回避する言及があったことと併せると、日本当局の動きを牽制している措置と考えざるを得ません。この措置が問題なのは中国とドイツに対しては何ら効力を持たない(実質的には日本のみに対して不当な円高圧力をもたらす)とする向きがあることです。

米国の通貨政策で市場の動きが決まるわけではないものの、海外投資家にとっては用意してあるシナリオの中から「投資アイディア」を発動する機会を常に伺っているわけで、今回の日銀政策の追加緩和の見送りは日本政府の無防備な状態を露呈し、狙い撃ちされた格好になります。

アベノミクスの時には、日本株が上がるということで日本株を買いました。しかし日本株を買って株価が上がっても円安になれば得られた値上がり益が為替損で相殺されてしまうので、短期の投資家は同時に円を売ってヘッジしておくのです。そうすれば株式の値上がり益はまるまる手に入ります。アベノミクスの局面では投機筋は日本株買い円売りというポジションを取り、その結果円が安くなり更に日本株が上がるという好循環が起こっていたと思います。このような好循環はアベノミクスが失敗する可能性が出てきたということになりますと、今度は日本株を売ると同時に円の売りポジションを外す、或いは逆に日本株を売って日本株の値下がり益を取ろうとするときに円安になれば値下がり益が薄められてしまうので、円を買って値下がり益を予め確保します。つまり、日本株の売りと円買いというのは完全にペアになったポジションであるという可能性が濃厚です。

前置きが長くなりましたが、2016年の数ある投資テーマの一つに地方銀行をめぐる金融再編の流れがあります。
これはバブル崩壊後から国内の金融事業の立て直しを図ってきた金融当局にとっては20年来の悲願でもあります。最近の再編例は1990年代や2000年代初めに見られた弱者救済の統合ではなく、好業績な銀行同士が統合する攻めの流れが鮮明となっています。ここまで鹿児島銀行と肥後銀行(九州FG<7180>)、ふくおかFG<8354>内の親和銀行と十八銀行が統合する他、横浜銀行<8332>と東日本銀行<8536>(コンコルディアFG)、足利銀行(足利HD<7167>傘下)と常陽銀行<8333>(商号は未定)などが経営統合を発表しています。県内トップバンク同士が統合していることで、関東、関西、九州といった地域のみならず、地域を越えた地銀連合が誕生する可能性もあります。経営統合の流れは、当局の要請だけではなく、地方の人口減少などさまざまな要因があると思われ、預金や資産で上位に立つ地銀を中心とした再編への思惑は今年のテーマとなるでしょう。

米国でもメガバンクに匹敵する規模のスーパーリージョナルバンクがあり、その筆頭となる「バンクオブアメリカ」やリーマンショック時にかの有名なバフェットが自社のバークシャーハサウェイ傘下に収めた「ウェルズファーゴ」などがそれである。日本でも度々『スーパーリージョナルバンク構想』が持ち上がり、地銀連合の広域化が進んでいます。

銀行経営にとっては日銀のマイナス金利導入は向かい風となる一方で、一段のコスト圧縮や業界再編を促すカンフル剤となります。本業の貸し出し実態は中小企業の資金需要が不動産や医療の分野に限られ、赤字穴埋めの後ろ向き融資も少なくありません。さらには定期預金お断りの銀行も出現する事態です。今後は金融分野における一段の規制緩和が進み、『Fintech』推進の掛け声の下、異業種からの参入も増えてくるでしょう。

銀行業の足元の株価が冴えないのは、効率的な資本面・業務面の改善と企業の設備投資を喚起することが求められていると言えます。日本の経済成長を財政政策で支えるのはいつまでも続けられるものではありませんし、日銀は緩和策の狙いをもっと丁寧に訴え、理解を深める必要があるのではないでしょうか。

長期投資家にとっては海外勢も二の足を踏む市場環境ですので、短期トレードで『テーマ株狙い』で積極的にリスクテイクするか、あるいは決算シーズン真っただ中で自己株式取得を発表する企業など、資金の集まりやすい投資アイディアを絞って取り組まれると良いのではないでしょうか。


≪主な銀行再編≫ ※⇒統合観測先
8308 りそなHD
8524 北洋銀行
8345 岩手銀行⇒(8342)青森銀行、(8343)秋田銀行
8713 フィデアHD(北都銀行、荘内銀行)⇒(8350)みちのく銀行、(7161)じもとHD(きらやか銀行、仙台銀行)
7167 足利HD⇒(8333)常陽銀行
8338 筑波銀行
7173 東京TYFG(東京都民銀行、八千代銀行)
7186 コンコルディアFG(横浜銀行、東日本銀行)⇒(8334)群馬銀行、(8336)武蔵野銀行、(非)神奈川銀行
8356 十六銀行
8545 関西アーバン銀行 ※三井住友FG子会社
8714 池田泉州HD
8370 紀陽銀行
8600 トモニHD(徳島銀行、香川銀行)⇒(非)大正銀行、(8542)トマト銀行
8418 山口FG(山口銀行、北九州銀行、もみじ銀行)
8354 ふくおかFG(福岡銀行、親和銀行、熊本銀行)⇒(8396)十八銀行
8327 西日本シティ銀行⇒(8395)佐賀銀行
7180 九州FG(肥後銀行、鹿児島銀行)⇒(8392)大分銀行、(8560)宮崎太陽銀行

8410 セブン銀行
8570 イオンフィナンシャルサービス


【参考】
≪自己株式取得≫ ※()内は発表日と発表後の株価パフォーマンス、ザラ場発表はその日の始値と終値で算出
6432 竹内製作所    (4/8発表、2.45%、高値 36.80%)
8016 オンワードHD   (4/8、6.45%、高値 8.23%)
3396 フェリシモ    (4/8、3.97%、高値 9.04%)
8095 イワキ      (4/12、7.73%、高値 25.41%)
2341 アルバイトタイムス(4/12、-5.28%、高値 -2.03%)
7725 インターアクション(4/12、0.00%、高値 25.31%)
3608 TSIホールディングス(4/13、6.53%、高値 7.55%)
9602 東宝       (4/14、-0.92%、高値 1.86%)
2930 北の達人コーポレーション(4/14、5.54%、高値 7.92%)
6101 ツガミ      (4/15、-3.36%、高値 8.50%)
2209 井村屋グループ  (4/18、1.41%、高値 4.08%)
3914 ジグソー     (4/20、7.46%、高値 11.10%)
7462 ダイヤ通商    (4/21、2.94%、高値 7.84%)
3361 トーエル     (4/25、-2.38%、高値 -1.75%)
6858 小野測器     (4/26、11.72%、高値 17.17%)
4307 野村総合研究所  (4/27、-3.11%、高値 2.37%)
4792 山田コンサルティングG(4/27、17.62%、高値 28.98%)
9020 東日本旅客鉄道  (4/27、-2.25%、高値 2.24%)
8604 野村HD      (4/27、-10.15%、高値 -0.75%)
4661 オリエンタルランド(4/27、-1.80%、高値 2.02%)
4826 CIJ        (4/27、5.59%、高値 10.11%)
2664 カワチ薬品    (4/27、20.68%、高値 23.55%)
4204 積水化学工業   (4/27、2.64%、高値 6.68%)
9742 アイネス     (4/27、5.06%、高値 10.66%)
4901 富士フィルムHD  (4/27、1.17%、高値 5.69%)
4526 理研ビタミン   (4/27、5.60%、高値 14.66%)
8698 マネックスG    (4/28、-2.39%、高値 0.68%)
6201 豊田自動織機   (4/28、-4.79%、高値 1.57%)
1878 大東建託     (4/28、-2.52%、高値 0.31%)
9533 東邦ガス     (4/28、-0.13%、高値 2.26%)
6724 セイコーエプソン (4/28、-4.01%、高値 -2.49%)
5333 日本ガイシ    (4/28、1.05%、高値 3.49%)
9531 東京ガス     (4/28、-3.58%、高値 0.80%)
5410 合同製鐵     (4/28、-8.42%、高値 -6.44%)


筆者:あすなろ運営事務局




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