株式会社あすなろ 関東財務局長(金商) 第686号 一般社団法人 日本投資顧問業協会 第011-1393

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あすなろ投資顧問

2022-12-16 15:00:00

アナリスト木村の銘柄研究部

週末連載コラム:割安株の考察:Part.1 割安株だからいずれ買われるだろうという思い込みは禁物

割安な株を買って、割高な株を売る。
充分理にかなったストラテジーのように聞こえますが、そもそも、割高・割安という基準になる概念としては、何を「モノサシ」にしたら良いのでしょうか?

「割安感を計測する」際に、良く引き合いの出される指標に、PER(株価収益率)があります。
株価が1株当たり純利益(EPS)の何倍まで買われているか、を参照しようという投資尺度です。

このPERという尺度は、当然ながらセクターによっても、平均的なPER水準が異なりますので、この数値が低ければ低いほど「割安だ」という判断は、「結果的に」、会員様各位の株式投資のお取り組みに、期待通りの投資成果をもたらさない可能性もあります。

そもそも論で恐縮ですが、「割安株」に対する投資は、「今は割安状態だが、いずれその状態が株価上昇という事象を経て改善されるだろう」という期待や投資シナリオに基づく投資です。
仮に「割安」であるという判断が正しくとも、期待どおりにその割安感が、株価上昇につながるかどうかは「別事象」です。

もっとわかりやすく申し上げるのであれば、「割安株でも割安状態のまま放置される可能性」も想定されます。
「割安だからそのうちに必ずや買われる」という確たる論拠は無いわけですね。

例えば、会員様各位に最も馴染み深いハズの日経平均を見てみましょう。
日経平均の構成銘柄が225社ある事はご存じのとおりですが、この日経平均の足元のPERはおよそ16.2倍程度です。
一方、日経平均構成銘柄のひとつ、大林組(1802)の足元のPERは10.2倍程度。
この2つの数値を「単純に比較」すると、日経平均に対して、大林組は「割安」であるように感じるかもしれません。

しかしながら、日経平均構成銘柄ひとつひとつには、「構成比率」というものが存在します。
この構成比率が一番大きいのはファーストリテーリング(9983)で、構成比率はおよそ10.2%。
構成比率の大きさでは、次いで東京エレクトロン(8035)、ソフトバングG(9984)と続きます。

そのファーストリテイリング(9983)の足元のPERはおよそ35.8倍です。
大林組のPER10.2倍と「単純比較」しても「割高」のように感じるかもしれません。

一方で、大林組の日経平均構成比率は僅かに0.13%に過ぎません。
つまり、大林組は日経平均構成銘柄でありながら、日経平均を「対象」とした「比較」には向きません。
そもそも論として、大林組と日経平均を「比較しようという意図が理にかなっていない」のです。
当然ながら、日経平均に比較して大林組が割安という「見方」は「的外れ」という事になりましょう。

日経225構成銘柄の中には大林組と同業の「大手ゼネコン」として、大成建設や清水建設や鹿島建設もあります。
・大成建設(1801):日経平均構成比率0.10%、足元のPER13.0倍程度
・清水建設(1803):日経平均構成比率0.09%、足元のPER10.3倍程度
・鹿島建設(1812):日経平均構成比率0.09%、足元のPER7.3倍程度

同じ日経平均構成銘柄の、同業種ですから、業績推移面や時価総額面を考慮しなければ、理論上は株価推移も似通っている事が想像できましょう。

しかしながら、この4社の株価は、株価の「傾き・方向性」はほぼ同じ「タイミング」で推移しておりながらも、過去1年間ほどの間には、4社の中でもPERの数値自体が最も高い、大成が最上位のパフォーマンスを示し、最下位は清水、最も相関性が高かったのは大林&鹿島でした。

実はこの4銘柄については、市場内で良く知られた「アノマリー」的な投資シナリオ・スタンスとして、「PER7倍で買ってPER12倍で売る」というものがあります。
過去の株価推移から、日経平均の推移は全く考慮せず、この4社の株価が「PER7倍に沈んだ際に買い」、「PER12倍まで買われたら売る」という「投資手法」ですね。
今なお、この「アノマリー」はそこそこ機能しており、機関投資家勢の中でも、
特に「バリュー投資」ファンドの運用主体は、実際にこの手法に沿って運用を行っているケースが少なくないと聞きます。

しかしながら、この投資手法における比較は、「株価指標と構成銘柄の割安感の比較」ではありません。
もっと単純な、単一銘柄の「時系列のPER水準比較」に過ぎません。
いわば、「値ごろ感」という見方に近いと言えましょう。

Part.1のここまでのところのまとめとしては、
「割安株だからいずれ買われるだろうという思い込みは禁物」
「PERを考慮した割安判断に、単なる数値比較を用いるのはキケン」としたいと存じます。

明日のPart.2(最終話)では、
「割安かどうかを見極めると共に期待リターン/リスクをも考慮する事こそ重要」という点に触れて、
私なりの見解をご紹介しようと存じます。


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 コラムの内容に関連する銘柄
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◆大成建設(1801)
◆大林組(1802)
◆清水建設(1803)
◆鹿島建設(1812)

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 個人的に注目している銘柄
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◆若築建設(1888)
◆福田組(1899)
◆ジオスター(5282)
値上がり益という期待リターンこそを狙うのならば、大手ゼネコンではなく、中堅、もしくは中小型銘柄群の方が面白そうですね。

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 私のコラムで紹介した銘柄
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◆パーク24(4666)
決算発表を受けて、ご紹介後の高値を更新!
一時年初来高値を更新しています。

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 単発スポット銘柄の見解
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◆≪木村ゴールド会員銘柄(****)≫
前場の出来高に比べ後場の出来高が少な目だった事から、売りが止まったと見た買いにより一時プラス圏へ!
来週の株価推移も楽しみです。


執筆:木村泰章

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