正直申し上げて、個人的には、自民党総裁選の行方に興味はありませんでした。
誰が総裁になっても、株式相場に与える影響は限定的で軽微であろう、と考えていた為です。
政策論争を横目で見ていても、結局のところ、「総論」から外れぬよう、大きな変化や進化が感じられない主張ばかりとの印象が強かったように思います。

個人的に、そんな「総論」ばかりの論調にやや変化が見られ始めたように感じたのは、9月20日くらいから石川県能登半島を襲った記録的な豪雨を経た、各総裁候補の論調からだったように思います。
1月の地震に続いて自然災害に見舞われた地域に対する、国民のお見舞い感情の高まりから、総裁選の政策論争にも当然ながら防災・減災に対する政府対応のあるべき姿が論点として急浮上してきたように感じました。

新たな司令塔となる省庁の創設を訴えているのは2人で、石破元幹事長は「防災省」を設置し、地震などの予知や災害時の対応に一元的にあたるとしています。
加藤元官房長官は、総理大臣直轄の「危機管理庁」を設置し、大規模な災害への備えを強化するとしています。
小林氏：内閣府の機能を強化するなどして被災者支援などの対応する事を主張。
上川外務大臣：最新技術を導入するとともに関係省庁の連携を強化して災害への備えにあたると主張。
河野デジタル大臣：各省庁から職員を内閣府に出向させ、防災の専門知識を備えた人材を育成すると主張。
高市経済安全保障担当大臣：最新の科学技術を取り入れ、線状降水帯による大雨など激甚化する災害への対策を講じると主張。
林官房長官：インフラ整備や避難所の環境改善など、ハード、ソフト両面で対策を進めると主張。
茂木幹事長：経済成長で見込まれる税収増などの新たな財源も活用し、地域のインフラを強化すると主張。
小泉氏：首都直下型地震に備え首都機能の分散を検討すると主張しています。

個人的に、「各論」的な実効性・即効性を感じたのは、高市経済安全保障担当大臣の主張でしたが、「総論」的でありながらも、石破元幹事長と加藤元官房長官による、新たな省庁の創設という主張は、将来的な災害への備えとしては最も的を得ているように思いました。
小泉氏の視点はもっと先を見ている感じで好感が持てましたが、なんとなく、野党の主張っぽくて、自民党の「総論」としては時期尚早との印象でした。

結局のところ、自民党総裁選という、誰が党内での発言力面でマウントを取るかという争いであって、今は未だ日本という国のリーダーシップを担う、というところまで「覚悟」が定まっていないように感じた次第です。
単なる覇権争いに、未曽有の連続災害に遭った石川県が、「時事ネタ」として取り上げられただけなのであれば残念すぎます。

国土強靭化という「総論」から、どれだけ実効性/即効性のある「各論」が導き出されるのかは、未だに不明瞭な状態であって、いたずらに防災・減災関連銘柄に飛び付き買いをするような行為は、「火事場のドロボー」的であって慎むべき行為でありましょう。
会員様各位は投資家であって、ドロボーでも野次馬でも無いのですから。。。



執筆：木村泰章

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