エイチ・ツー・オー　リテイリング（8242）


阪急・阪神百貨店の統合によって誕生した同社は、関西圏を基盤とする流通持株会社であり、百貨店と食品スーパーの二本柱を展開。旗艦である阪急うめだ本店は日本初の駅直結型デパートとして知られ、地域密着と集客力に秀でた存在。さらに、イズミヤや阪急オアシスといった食品系子会社を傘下に収め、2024年には関西スーパーマーケットも完全子会社化。これにより、非百貨店分野でも安定収益の構築を目指す動きが強まり、事業ポートフォリオの再編が進行中とみる。大型改装によるブランド刷新も図られており、店舗の再定義とともに、既存顧客の定着と新規層の取り込みが期待される。

2025年3月期の決算では、中国からのインバウンド需要の急回復が顕著に表れ、阪急本店を中心に百貨店事業が伸長。国内顧客の安定した購買も支えとなり、営業利益は続伸。最終利益では、保有株の売却益なども寄与し、前期比で大幅な増益着地となった。一方、2026年3月期は一転して経常利益14％減益の計画を示しているが、これは改装投資や費用先行型の要因も含まれており、成長投資に伴う一時的な圧迫との見方もある。なお、年間配当については前期・今期ともに2円の増配を予定しており、株主還元に対する姿勢は継続中。食品事業では、人員配置の見直しなどにより収益性の改善も進みつつある。

2024年12月末の2379.5円をピークに株価は調整局面に入り、4月には1750円前後まで下落したが、直近では2000円を挟んでの揉み合いが続く。5月16日に2100円直前まで反発した際の出来高急増が一過性に留まり、5月23日には1997.5円まで反落。信用倍率は足元で8倍超が続いており、個人の買いポジションの巻き戻しには注意が必要。PERは13倍台と上昇傾向にあり、割安感はやや後退しつつある。チャート上では、75日線が上値抵抗として意識されており、次の反転の兆しを見極めるにはもう一段の材料が求められよう。中期的には店舗再編効果の顕在化が株価の牽引要因となるか注視したい局面。