エス・エム・エス（2175）

高齢社会という避けられぬ構造変化に正面から向き合う同社の事業モデルは独特である。介護・医療分野における人材紹介を皮切りに40以上のサービスを展開し、従事者・事業者・利用者という三者を情報で結ぶインフラを構築してきた点が特筆される。単なる人材マッチングに留まらず、介護事業者向けSaaS「カイポケ」やデジタルヘルスケアサービスなど、業界の課題解決に直結する多様なビジネスモデルを擁する点が強みといえよう。日本のみならずアジア・オセアニア13カ国への展開も進めており、高齢化という普遍的社会課題に対するソリューションの横展開余地は大きいと見る。医療・介護という専門性が高く情報ギャップが生まれやすい領域において、信頼性の高い情報を提供し続けることで、長期的な顧客基盤の構築が期待できる構造にある。

2026年3月期第1四半期は売上高186.72億円（前年同期比7.1%増）、営業利益36.16億円（同20.5%増）、親会社株主に帰属する四半期純利益39.40億円（同24.6%増）と好調な滑り出しとなった。キャリアパートナーの採用抑制により費用増加が限定的となったことが利益押し上げに寄与した形である。介護キャリアは同11.2%増、カイポケ事業は同14.1%増と主力事業が順調に拡大しており、事業開発分野も同15.6%増と新規事業の成長が見て取れる。海外分野は中東情勢の影響などで同10.4%減となったものの、全体への影響は限定的といえよう。通期予想は売上高675.44億円（前期比10.8%増）、営業利益72.87億円（同15.0%増）、純利益70.29億円（同16.1%増）を据え置いており、第1四半期の進捗率から見て達成可能性は高いと判断される。

株価は2025年10月時点で1570円前後で推移しており、年初来では調整局面が続いている状況である。2024年後半から2025年前半にかけて1800円台まで上昇した後、利益確定売りや市場全体の調整に連動する形で水準を切り下げてきた経緯がある。ただし直近の好調な四半期決算を受けて、下値では押し目買いの動きも見られる展開となっている。PERは18倍台と市場平均に比してやや高めの水準であり、成長期待が一定程度織り込まれている状況といえよう。移動平均線との関係では、25日線を挟んだ攻防が続いており、短期的な方向感は定まりにくい展開である。ただし75日線は依然として右肩上がりを維持しており、中期的なトレンドは崩れていないとの見方もできる。今後は通期業績の達成度合いと、成長投資の成果が株価の方向性を左右する要因となろう。