元外資系金融マンのこぼれ話 「新大統領歓迎相場と今後の展望」
今週もお取り組みお疲れ様でした。
いつも朝の『加藤の相場展望』を買いておりますが、今日は中期的な展望(3ヶ月程度)についてふれていきたいと思います。
11/9に米国では新しくトランプ大統領の誕生が決定し、市場は手の平を返したようにもてはやして活況となっているようです。次期トランプ政権が打ち出す政策期待を受けて米国の株式市場ではそれを先取りする動きが出ておりますが、何でもかんでも買われる状況はそう長くは続かないでしょう。
かと言って、株が下がるのかというとそういうわけではありません。
考えてみてください。
高値警戒感があるという理由だけで、この相場で売りポジションを新規で発注できる人がどれほどいるでしょうか。
当たり前ですが、株式売買は相手がいて初めて株価が成立します。
買いの注文を出す時に当然売る人がいるわけですね。その相手はなぜ自分が買いたいと思っているその株を手放すのでしょうか?
米国では大統領選挙の熱気そのままに狂気じみた買いが入ってくる状況で、空売りを入れることがどれほど勇気のいることなのか想像してみましょう。
ちなみに私は今後の相場については米大統領選でどちらの候補が勝利したとしても株高になるだろうとみておりました。ただし、選挙当日の日本市場だけがあれだけ乱高下したのはとても不可解なことでした。
今回は見事トランプ氏が事前の下馬評を覆して逆転勝利を収めましたので、上昇は上昇でもこれまでの流れとは違ったかたちで実現することになるでしょう。
トランプ政策の中身で大きな影響を及ぼしそうなものを確認していきます。
まず、米国株高のけん引役となっているのが金融セクターですが、要因は大きく二つ。
一つ目は【財政拡大懸念による米国金利上昇】です。
背景にあるのは総額50兆円に及ぶ大規模なインフラ投資計画と法人税率35%→15%への引き下げです。また低所得者の税率ゼロも支持層が広がったた要因かと思われますが、問題はその財源はどこから来るの?という懸念が米国の信用力を裏付ける債券の下落につながっているのでしょう。
二つ目は【金融規制の緩和】です。
2008年に起こったリーマンショックを受けて、オバマ政権の下で成立したドッド・フランク法を撤廃するという話が持ち上がっていることです。
ちなみに、ドッド・フランク法は金融機関が過度なリスクを取り過ぎて破綻してしまうなどして、実体経済にまで悪影響を及ぼさないように規制を厳しくしたというものです。
これらの要因から米国金利は大幅に上昇しており、銀行の利ザヤが拡大し収益増加につながるとして商業銀行のバンクオブアメリカ(米:BAC)などが買われ、過去にデリバティブなどでレバレッジをかけて荒稼ぎした名門投資銀行を金融規制の鎖から解放して莫大な儲けを生み出させるのではというような思惑からゴールドマンサックス(米:GS)なども大幅上昇しています。
米国の金利上昇の影響は米株上昇だけではありません。金利差の拡大から為替市場では急激にドル高円安が進んでおり、日本の輸出企業にとっては短期的には株価上昇要因といえそうです。
ただし、短期的にというのはトランプ政策の中に関税強化や為替操作国として円高圧力をかけてくる懸念もあり、加えてTPP見送りによる企業収益期待の低下、更には設備投資意欲の低下など負の側面もありそうなことが挙げられます。
また、別の角度から最近の物色株を見ていきますと、ロシア関連や防衛関連といった銘柄に資金が集まったりしていましたね。
大局的に見ると、日本株上昇の最大要因となるのは日本の政治基盤の安定だと思っています。なぜなら海外勢が日本市場に戻ってくる絶対不可欠の条件だからです。
そういう意味で上記の関連銘柄が物色されたのには大きな意味がありそうです。
特に三菱重工(7011)やIHI(7013)をはじめとする重電系が強かったのは特徴的ですね。
また、ロシア関連で思い出すのは過去の「サハリンプロジェクト」で関わった石油メジャーや商社などにも動きが出てくるのではないかと密かに期待しています。
サハリン1のエクソンモービル(米:XOM)や伊藤忠(8001)、丸紅(8002)、サハリン2の三井物産(8031)や三菱商事(8058)などです。
その後、サハリン3やサハリン4、サハリン5まで進んでいますが、日本企業は関与していません。政府の接近と同時にビジネス面では商社マンの暗躍が付き物ですので、セットで期待しておきたいところです。
トランプ大統領の誕生で、ロシアとの距離が縮まる思惑や日米安保の関係性がぜい弱になったり、日本の核開発を容認してもいいとかの発言があったりでにわかに日本の地政学リスクが高まったように感じられます。
そんな状況で考えられるのは、年明けと噂されている衆議院解散が早まる可能性があるということです。それで行われる選挙テーマの第一義が間違いなく日米安保維持に向けた憲法改正になることは明白です。
もし、トランプ大統領就任の前に解散総選挙を前倒しで行われるというようなことがあれば、12月は米利上げの有無とあわせて市場を揺るがす大きなインパクトがもたらされるようになると思われます。
まずは外国人持ち株比率の高いような銘柄を狙っていくのもよいかもしれません。来週も株高が続くことを願いながら、参考銘柄をご紹介いたします。右に外国人の持ち株比率を併記しておきます。
ネクソン(3659)・・・91%
日本オラクル(4716)・・・87%
MonotaRO(3064)・・・81%
ユニバーサルエンターテインメント(6425)・・・76%
中外製薬(4519)・・・76%
アゴーラホスピタリティ(9704)・・・73%
日産自動車(7201)・・・70%
すかいらーく(3197)・・・68%
昭和シェル石油(5002)・・・64%
ブロードリーフ(3673)・・・63%
ツバキ・ナカシマ(6464)・・・63%
トレンドマイクロ(4704)・・・61%
ミスミG(9962)・・・60%
オリックス(8591)・・・60%
【 相 場 の 格 言 】
『買いにくい相場は高い、買いやすい相場は安い』
それでは、来週もまた会員様の喜びの声が聞けることを楽しみにしています。
執筆:加藤あきら
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