三菱鉛筆（7976）

筆記具の企画から生産、販売までを一貫して手掛ける老舗メーカーである。主力のジェットストリームを筆頭に、書き心地や耐久性など、細かな改良を積み重ねてきた点が競争力につながるとみられる。海外市場ではアジア圏を中心にブランドの認知が深まりつつあり、日常的に使われる文具であるがゆえの安定した需要も強みとなる。さらにデジタル化の進行によって、アナログ筆記具の価値が再評価される流れも追い風となり得よう。学校・オフィス・個人用途と市場が広く、多様な顧客層に支えられるビジネスモデルが特徴である。今後は海外展開の深化と、高付加価値商品の拡大が成長の芽になりそうである。

直近決算では、海外向けの販売が底堅く推移し、看板商品の売上が安定した収益を支える構図が続いた。円安環境が続いた時期には海外事業の採算改善がみられた点もプラス材料といえる。一方で、原材料のコスト上昇や物流費の増加が利益面の重しとなりやすく、同社も効率化や価格施策を進めている状況であろう。通期では慎重な見通しを維持しつつも、海外需要と高付加価値品の寄与が利益改善に向かう可能性があるとみられる。大きな景気変動に左右されにくい製品構成であるため、安定した業績の下地が形成されている点が同社の特徴とみる。今後は収益源の多様化と海外比率の上昇が業績の方向性を決める鍵となりそうだ。

株価は中期的にみると緩やかな持ち合いを形成しており、大きく崩れにくい一方で上値を追う動きも限定的な状態が続いてきた印象。目先では移動平均線との距離が縮まり、売りと買いの均衡が取れやすい局面とみられる。出来高は落ち着いた水準で推移しており、短期的な値動きよりも中長期の視点が合いやすい銘柄といえよう。過去の下値を意識した買いが入りやすい値位置にあるため、材料次第で株価がやや反応しやすい場面は想定される。とはいえ急騰を狙うタイプではなく、緩やかなトレンドの把握が重要となる株価推移と分析。直近では短期線と長期線のゴールデンクロスによるテクニカル好転に期待を持たせる。