椿本チエイン（6371）

1917年創業の同社は、産業用チェーンと自動車用タイミングチェーンで世界トップシェアを誇る動力伝達機器の専門メーカーである。その事業構造は4つのセグメントから成り立ち、チェーン事業、モーションコントロール事業、モビリティ事業、そしてマテハン事業が柱となっている。産業用スチールチェーンで世界シェア16%、自動車エンジン用タイミングチェーンシステムでは37%のシェアを有しており、部品供給からシステム全体までを手掛ける総合力が競争優位性の源泉と見られる。特筆すべきは2026年1月に大同工業を完全子会社化する経営統合であり、二輪車用チェーンに強みを持つ同社の傘下入りによって、未開拓のインドや南米市場への展開が期待される点である。また物流自動化需要を捉えたマテハン事業では、KDDIとの合弁会社Nexa Wareを通じたデータ分析サービスの展開など、新たな収益機会の創出にも着手している。

2026年3月期第2四半期の連結決算では、売上高が1356億3400万円と前年同期比0.5%の微減となった。チェーン事業は北米関税の影響を受けたものの3.7%増収を確保し、モビリティ事業も1.4%の増収となった。一方でマテハン事業が米国での自動車業界向けシステム販売減により10.4%減収と足を引っ張る形となった。営業利益は83億200万円で同12.2%減、経常利益は101億16百万円で同9.9%減と減益となったが、親会社株主に帰属する中間純利益は投資有価証券売却益39億円超の計上により99億21百万円と0.9%減にとどまった。通期予想は売上高を2840億円へ下方修正したものの、受注残高は過去最高を更新しており、下期以降の回復が見込まれる展開である。米国関税や物価上昇といった外部環境の厳しさはあるが、主力のチェーン事業とモビリティ事業の底堅さが支えとなろう。

株価は10月末の決算発表で2000円台前半まで下落したが、11月下旬以降は切り返しの動きを見せており、12月9日現在2232円で推移している。11月安値からは約9%の上昇となっているが、依然として年初来高値の2278円を目指す展開にはなっていない。移動平均線との関係では、短期線は上向きつつあるものの、中期線との乖離が縮小しきれておらず、明確な上昇トレンド転換のシグナルは出ていない状況だ。出来高は決算発表前後に増加したが、その後は平均的な水準に戻っており、方向感を探る展開が続いている。テクニカル指標は買われ過ぎ圏を脱して中立域に位置しており、ここからの上昇余地は確保されている状況と言える。2200円台前半での支持線が意識される中、2250円を安定的に上抜けできるかが今後の焦点となろう。業績下方修正を消化した後の株価水準として、配当利回り3.6%程度が下値の目安と見られる。