エービーシー・マート（2670）

「靴を売る」のではない。「スタイルと流行」を売る企業、それがエービーシー・マートである。同社は単なる小売店ではない。VansやHawkinsといった強力な自社ブランド（PB）を擁し、企画から製造、販売までを一気通貫で行うSPA（製造小売）モデルを確立している点が最大の強みだ。これにより、他社を圧倒する高い利益率を実現している。また、近年は「ABC-MART GRAND STAGE」のような、デジタルとリアルを融合させ、買い物体験そのものを価値とする大型店の出店を加速。都心部や観光地では、戻ってきた外国人観光客によるインバウンド需要を確実に取り込むなど、市場の変化を敏感に察知するマーケティング力も卓越している。

2026年2月期第2四半期の連結決算は、強弱が入り混じる展開となった。売上高は1901億3200万円と前年同期比で微増を確保したものの、本業の儲けを示す営業利益は336億4400万円と、前年同期比で1.2パーセントの減益となった。国内事業は「ハンズフリーシューズ」などの機能性商品が好調で、インバウンド需要も追い風となり増収増益を達成している。一方で、海外事業はインフレによる消費鈍化や為替の影響を受け、特に韓国や米国での苦戦が利益を圧迫した形だ。通期計画に対する進捗は悪くないものの、海外部門の立て直しが下半期の鍵を握ると見られる。

決算発表後の株価は、海外事業の減速を嫌気してか、やや調整色を強めている。日足チャートを見ると、上値を切り下げる展開が続いており、心理的な節目となる価格帯での攻防が続いている。25日移動平均線が下向きで推移し、上値抵抗線として意識されている状況だ。しかし、週足レベルで見れば長期的には上昇トレンドの中にある押し目とも捉えられる。ボリンジャーバンドのマイナス2シグマ近辺まで調整が進めば、売られすぎ感から自律反発の期待も高まるだろう。一目均衡表の雲の中での推移が続いており、ここを下抜けるか、反転して雲を突破できるか、まさに正念場のチャート形状と言える。