トーカロ（3433）

トーカロは1951年創業の表面改質加工メーカーで、神戸に本社を置く。事業の中心は「溶射加工」と呼ばれる技術で、金属やセラミックスを高温で溶かして部品表面に吹き付け、耐摩耗性や耐熱性を持つ皮膜を形成する。この技術が特に威力を発揮するのが半導体製造装置向けだ。半導体製造には高温のプラズマ環境や化学薬品との接触があり、装置部品の劣化が激しい。トーカロの溶射加工はこうした部品を保護し、寿命を延ばす役割を果たしている。国内溶射市場約700億円のうち、同社は約4割強のシェアを握るとされる。特に半導体・FPD(フラットパネルディスプレイ)分野では世界最大手の半導体メーカーとの取引実績があり、技術力の高さが評価されている。生成AIやデータセンター向け半導体需要の高まりが、同社の成長を後押しする構図となっているようだ。

2026年3月期第2四半期(4～9月)は売上高283.11億円(前年同期比9.5%増)、営業利益65.18億円(同21.1%増)と好調だった。特に海外子会社の業績が牽引し、半導体分野を中心に過去最高の数字を記録している。通期予想は売上高570億円、経常利益130億円で据え置かれており、上期の進捗率は約48%と順調だ。興味深いのは、2025年3月期に中期経営計画の最終年度目標(売上高530億円、経常利益120億円)を1年前倒しで達成した点である。これは生成AI向け半導体の需要急増が想定を上回ったことを示している。2030年に向けた半導体製造装置市場は2024年比1.7倍の2080億ドルに拡大する見通しで、同社の成長余地はまだ大きいと考えられる。ただし設備投資や人件費の増加もあり、利益面では慎重な見通しとなっている。

現在の株価は2216円で、年初来高値2366円(11月4日)から約6%調整した水準にある。年初来安値は1369円(4月7日)だったため、年間では約62%上昇している計算だ。配当利回りは約3.2%と手堅く、アナリストの平均目標株価は3000円と現在値から約36%の上昇余地を示している。注目すべきは半導体市場の見通しで、世界半導体市場統計(WSTS)によると2026年の市場規模は約9754億ドルと過去最高になる見込みだ。生成AIやデータセンター向け需要が引き続き牽引役となり、半導体製造装置への投資も拡大が続くだろう。トーカロはこの波に乗る位置にあるが、株価は既にこの期待をある程度織り込んでいる可能性もある。それでも溶射加工という参入障壁の高い技術を持ち、国内4割強のシェアを握る同社の優位性は揺るぎない。3000円を視野に入れた展開も十分あり得るのではないか。