推定無罪と10バガー
今回は、業務の中で行った一つの検証作業を題材に、コンプライアンス部門の役割についてご紹介したいと思います。
私が直近で確認する必要があったのは、次のような命題でした。
仮説0:
長期に低迷した日本株において、10倍株(いわゆる10バガー)となった銘柄は少なく、20バガーや100バガーに至る銘柄は極めてまれである。
仮説1:
日本株でも、個別銘柄ベースでは10バガーとなった銘柄は決して少なくなく、20バガー、さらには100バガーに達した事例も確認される。
アナリストやマーケティング担当者(以下、フロント)は、日々のマーケット分析を通じて、日本株の中にも10バガー、20バガー、100バガーといった大幅上昇銘柄が実際に存在することを把握していました。
そして、それらの情報をお客様への助言や提案に生かしたいと考えていました。
そこで、コンプライアンス担当であるバックオフィスには、その情報が客観的事実に基づくものかどうかを確認する役割が生じます。
事実に基づかない内容をレポート等に反映すれば、誤認を招きかねず、法令や業務運営上の問題にもつながり得るからです。
この種の分析は、一見するとフロントの専管事項のように思われるかもしれません。
しかし実際には、バックオフィスが独立した立場から検証を行う場面も少なくありません。本件は、その一例でした。
幸い、業務で利用しているQUICKのシステムには、一定期間内の高値・安値を抽出・フィルタリングする機能があります。
そこで、以下の条件で検証を行いました。
・期間:2008年9月1日~2026年3月31日
・対象ユニバース:プライム・スタンダード・グロースの全銘柄(3745銘柄)
・条件:安値日付<高値日付
・倍率:高値/安値
結果
・10バガー:1198銘柄(対象ユニバース比31.99%)
・20バガー:533銘柄(対象ユニバース比14.23%)
・100バガー:53銘柄(対象ユニバース比1.42%)
この結果を別の角度から見ると、対象ユニバースのおよそ3分の1が10バガーを記録しており、さらに10バガー銘柄のうち約44.5%が20バガー、約4.4%が100バガーに達していたことになります。
日本株は、リーマン・ショックや東日本大震災などを経て、長く厳しい局面を含んでいました。
それでもなお、個別株の長期投資という観点では、大きな上昇機会が一定数存在していたことを示す結果といえるでしょう。
以上から、本件では仮説0は支持されず、仮説1のほうが現実に適合的であると判断できます。
ここで重要なのは、なぜこの種の分析をバックオフィスが行うのかという点です。
フロントには、どうしても「魅力的な事例を見いだしたい」という意識が働きやすく、そこに無意識のバイアスが入り込む余地があります。
一方で、バックオフィスはフロントから独立した立場にあるため、先入観をできるだけ排し、慎重な仮説設定のもとで検証を進めることができます。
つまり、まずは「そのような顕著な上昇事例はそれほど多くないのではないか」という仮説から出発し、十分なデータと証拠によってのみ、その仮説を退ける。
これが、バックオフィスに求められる基本姿勢です。
このプロセスは、タイトルにもあるように、刑事司法における推定無罪の原則を想起させます。
刑事裁判では、例え凶悪犯罪であっても「被告人は無罪と推定される」という原則があります。
すなわち、裁判の出発点では「有罪」と決めつけるのではなく、「無罪である」との前提から始めるわけです。
そして、その推定を覆すには、合理的な疑いを超えるだけの十分な証拠が必要とされます。
本件に引きつけて言えば、仮説0はこの出発点に近いものです。
すなわち、「日本株に10バガーとなった銘柄は少なく、20バガーや100バガーは極めてまれである」という慎重な前提をまず置く。
そのうえで、実績データという証拠を積み上げ、その前提では説明しきれないことが確認されたときに、初めて仮説1を採用する。そうした姿勢が重要になります。
もちろん、刑事裁判と金融実務は同じではありません。
もっとも、先入観で結論を急がず、まず慎重な前提を置き、客観的証拠に基づいて判断するという点では、両者に通じるものがあります。
このように、あすなろのバックオフィスは、フロントとは異なる独立した視点から事実を積み上げています。
私たちバックオフィスがお客様に個別銘柄をご紹介することはありませんが、フロントが助言・提案を行う際、その前提となるデータや根拠の妥当性を裏側で検証していることをご理解いただければ幸いです。
今後とも、あすなろ投資顧問をよろしくお願いいたします。
あすなろ コンプライアンス部
市丸和之
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