米株バイオ活況
6月14日に連邦公開市場委員会(FOMC)は、景気が堅調に上向いているとして今年2回目になる利上げと、年内あと1回の利上げの計画を公表した。同日の連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長の記者会見では、市場では12月と臆されていた量的緩和で膨らんだ保有資産圧縮を早くも9月に着手する可能性が示唆された。
市場は金融政策の正常化へ向けたFRBの政策を良しと受け止め、相場の上昇基調に変わりはない。米国株式相場は6月後半にかけ、ナスダック総合指数のハイテク株の利益確定売りやNYダウ工業株30種平均の原油安を受けた調整をこなし、高値圏で堅調に推移している。
今後発表予定の経済指標が期待ほど改善されないとの見方もあるが、内需は停滞しても海外での増収や新しいビジネスの成長期待を受けた個別企業の収益拡大をテコに今後も株高が続くものと考えられる。
6月19日の週はナスダックで、比率の大きいハイテク株の調整が取りざたされた一方で、バイオテクノロジー株の躍進が注目された。パイプラインに豊富な開発中の医薬品を取りそろえ、海外展開も期待できる企業の株価が堅調である。
個別では、がん、多発性骨髄腫などの治療薬開発のセルジーン(CELG)時価総額1,048億ドルを筆頭に、レジェネロン(REGN)同536億ドル、バイオジェン(BIIB)同583億ドル、エクセリクス(EXEL)同70億ドルなどが過去1年間の高値圏で推移している(時価総額は現地6/28時点)。
今回あすなろでは、バイオ関連から時価総額が1,000億ドルに達しない中小型の以下2銘柄を紹介したい。
1.エクセリクス(EXEL)[NASDAQ]
サンフランシスコに本拠を置くがん治療薬開発会社。
今年1月に武田薬品が、同社のがん治療薬 cabozantinib(カボザンチニブ)の日本での開発と販売契約の締結を発表した。同薬は、進行性腎細胞がんの治療薬の錠剤としてすでに米国のほかEUで販売されている。
資産597,541千ドル、売上高191,454千ドル、営業損失28,124千ドル、純損失70,222千ドル(16年12月通期)。
17/3四半期決算は、売上高80,887千ドル(前年同期比5.2倍)、純利益16,700千ドル(前年同期の赤字59,223千ドルから黒字転換)、一株当たり純利益EPSは、基本0.06ドル、希薄化後0.05ドル。
株価は24.02ドル、前日比(+1.82%)(現地6/28引け)。株価の位置は、足元で13週、26週移動平均を上放たれたところ。四半期ベースで純利益が前年同期から黒字転換しており、増益基調が確認できた。米国以外に販路を広げており、武田薬品と組んだ今後の日本での販売が期待される。
2.リジェネロン・ファーマシューティカルズ(REGN)[NASDAQ]
ニューヨークに本拠を置くがん、眼科、炎症などの重病疾患用の医薬品会社。眼科では加齢黄斑変性症と網膜中心静脈閉塞の黄斑浮腫治療薬「EYLEA」、転移性結腸直腸がん治療薬「ZALTRAP」、抗炎症剤「ARCALYST」などを扱う。
資産6,973百万ドル、売上高4,860百万ドル、税引き前利益1,330百万ドル (16年12月通期)。
17/3四半期決算は、売上高1,319百万ドル(前年同期比+9.8%)、純利益249百万ドル(同+37.2%)、一株当たり純利益EPSは、基本2.36ドル、希薄化後2.16ドル。
株価は513.19ドル、前日比+2.20% (現地6/28引け)。株価の位置は5月以降、13週、26週移動平均を上回って推移中。がんと眼科に有力な治療薬品を多く持つほか、
パイプラインで開発中の医薬品が20弱と多いのが魅力である。
<米国株豆知識 その1>
ユニコーン銘柄とは?
米国の場合、ベンチャー企業は、投資ファンドなどから事業計画の補強、資金調達の育成を受けて企業価値を高めてから上場するケースが多い。
企業価値が1ビリオンドル、10億ドル=1000億円超に成長したものを「ユニコーン」という。今月、セクハラや差別などの不祥事からCEOが辞任したライドシェア(スマホを利用した格安タクシーサービス)のウーバーは上場の予定が危惧されている。他に上場待たれる先に宿泊システムのエア・ビー・アンド・ビーがある。
また、すでに上場を遂げた銘柄には、写真、動画アプリのスナップ(SNAP)[NYSE]や、カード決済インフラのスクエア(SQ)[NYSE]などがある。決算発表で、事前の市場予想を上回ったか否かが買われるポイントになっている。
執筆:パパジアン裕子
<著者略歴>
1983年上智大学外国語学部卒業後、外資系銀行、証券会社等にて勤務。モルガン・スタンレー証券、ゴールドマン・サックス証券在籍時は債券部に所属。1994年に渡米、みずほキャピタルマーケッツでスワップ業務に従事する傍ら、ニューヨーク大学でMBA(金融専攻)を取得。2003年に帰国後は、主にみずほ証券投資情報部におけるヴァイス・プレジデントの任に就き60社を超える欧米企業を担当、グローバルアナリストとして数々のファイナンスレポートを執筆。鮮度の高い現地情報と知識に裏付けされた明快な市場分析には定評があり、常に投資家の視点を持ちながらベストパフォーマンスを追求。
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