加藤の相場展望<2017年夏版 その2>
あすなろ投資顧問 加藤です。
週明けの日本市場はお休み前の先物と為替の売り仕掛けが投資家心理を悪化させて、厳しいスタートとなりました。
日経平均は一時200円超の下げ幅で19500円台に、マザーズ指数も5月のゴールデンウィーク辺りの1050ポイント台まで下値を切り下げています。
北朝鮮問題の地政学リスクで身動きが取れないところに、狼狽売りが出たものと思われます。
ただし、朝方発表された日本のGDPは予測0.6%に対して1.0%と良好な数値が出されましたので、相変わらずマクロ経済指標は相場を下支えしたとみてよさそうです。
先週の相場展望の続きとなりますが、こうした地合い悪化に引きずられて売り込まれた銘柄は押し目買いの好機と考えるのがよいかと思います。
こんな相場で何言ってるんだ!?と思われる方も多いかもしれません。
しかし、この一連の相場展開と投資家心理の悪化は私たちの記憶に新しい4月相場と似通っているところがあります。
本日は市場に対する不安から非常に多くのお問い合わせをいただきました。
みな一様に今後の株価動向について疑心暗鬼になっています。おそらくはそうしたお声は一部の投資家だけでなく、市場全体に蔓延していることと思われます。
よく分からないまま株価が下落してしまうと、目に見えない恐怖が押し寄せ、誰しもが動揺してしまいますので少し整理が必要かと思います。
・足元の株価急落について
地政学リスクに起因する市場地合いの悪化、ファンドの売り仕掛け、堅調そのものだった海外市場が崩れたなど種々の要因が重なり合った結果です。決算時期と重なり、個別要因の上下にバイアスがかかかってボラティリティが上昇したことも挙げられます。
・4月の地政学リスク表面化との違い
トランプ大統領、金正恩総書記の発言内容は激化しながらも、お互いに演出感が強くて市場調整のやや後付け感が否めません。米国・北朝鮮ともに軍事衝突の準備が整っているとは言えず、すぐに戦争勃発するという見方は過激なマスコミの論調に過ぎないでしょう。海外市場も日本以外は最高値を更新するなど非常に堅調だった中で、調整の材料となったものと思われます。
・株価上昇の阻害要因
世界的に見て明らかに割安な日本株の上昇を阻害しているのは、足元で横たわっている為替の円高に他なりません。欧米市場は通貨安を背景として、逆に割高感が意識される水準まで買い進まれており、先日のNYダウ200ドル安も必要な調整の範囲内と言えます。今後は為替の円安転換と海外株式市場に連れ安しない足腰の強さが求められる相場になることでしょう。
・今後の相場展開
4月に意識された地政学リスクは、5月の企業決算を確認した途端に鳴りを潜め、そこから6月初旬に向かって日本株はV字回復どころか、さらに高値を更新していく銘柄が続出しました。今回の8月決算が一巡したことで改めて日本株の割安感が台頭しているのは事実で、今後は決算内容を織り込んで強含む展開が予想されます。
今後の相場を占う上で懸念されることは山ほどあります。しかし、現在の株価動向は経済よりも政治に焦点が当てられており、その不透明さが投資家に嫌気されていると言えます。
各国の経済指標が景気回復を示しているとおり、経済環境は非常にポジティブで、企業業績も良好とマクロもミクロも株価上昇を後押ししていることに変わりはありません。
問題は企業の収益性や成長性を打ち消すほどの政治不安が株価上昇の阻害要因になっていると考えられます。それは米国のトランプ政権の動向しかり、日本の安倍政権の動向しかり、北朝鮮の軍事挑発の動向しかりです。
選挙もそうですが、政治は水ものですので予測することにあまり意味はありません。
投資家として株価動向の行方を予測する上では尚のこと、誰かのバイアスがかかったニュース記事は投資判断の妨げにしかなりません。
今の市場は本来の企業価値に基づいた株価評価ではなく、陰謀と思惑が支配しているに過ぎないと言えます。
こういう時だからこそ大局を見る相場観が必要になると思います。
個人的な見解では目先の下値は気になりますが、ここから先は4月の底値から企業業績を確認して高値をとりに行ったようなどんでん返しが来ると思っています。
市場は良くも悪くも新しいもの好きです。銀行株の底入れと為替の反転、これがシグナルとなって相場の方向性は変わっていくでしょう。
あまりにも不安な場合は、投資家の不安に投資するVIX指数のETF(1552)、(1561)などに目を向けてみるのがよいかと思います。
【 相 場 の 格 言 】
『幾回敗れるも、断じて我が成功を疑うこと勿れ』
それでは、明日に希望をつないで慎重にかつ大胆に取り組んでまいりましょう。
執筆:加藤あきら
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