政治・地政学リスクに神経質な9月の幕開け
6日には次期FRB議長と目論されていたコーン国家経済会議委員長がトランプ大統領の白人至上主義に反対しているため候補にならないとメディアが報じた。19〜20日には連邦公開市場委員会(FOMC)が予定されている。いずれにしても政治・地政学リスクを睨んだ神経質な展開が予想される月の始まりである。
注目された経済指標では、8月30日発表の4〜6月期GDP季節調整済み改定値が前期比プラス3%となり2年ぶりの高い伸びだった。9月1日発表の8月の雇用統計は、失業率4.4%(予想4.3%)、非農業部門雇用者数の前月比15.6万人増加(予想18万人)と振るわなかったが、ISM製造業景況感指数は58.8(予想56.5)と強かったため、年内利上げ見通しが遠のくまでには至らず、市場はFRBの9月のバランスシート縮小開始をほぼ確実視している。また6日にISM非製造業景況観指数が55.3(予想55.5)と発表された。ハリケーンの結果を織り込んだ9月の統計の発表が待たれよう。
あすなろでは、引き続き政治、地政学リスクによる短期間の調整に注意しつつも経済成長の基調が強いことから株高が続くことを予想している。
今回はiPhone発売から10年が経ち、9月中旬には新モデルの投入を控え、株価がいまだ上昇続けるアップルに関連した、2銘柄を紹介する。
1.ユニバーサル・ディスプレイ(OLED)[NASDAQ]
ユニバーサル・ディスプレイ(Universal Display Corp.)は、ニュージャージ―州アーウィンに本拠を置く米国の有機EL(OLED: organic light emitting diode)材料メーカー。スマートフォンや照明デバイス向け有機EL技術の研究、開発、商品化に従事。製造業者向けに有機ELディスプレイおよび照明デバイスに関する技術ライセンスも供与する。製品には「FOLED」フレキシブル有機EL照明、「ユニバーサルP2OLED」リン光有機EL照明などがある。
有機EL(OLED)は今やLCDにとって代わろうとしている。LCDと比べて、省電力、色彩があざやか、しかも薄い利点がうたわれている。サムスンがスマホ画面にすでに使用しているほか、アップルのiPhone8への搭載が繰り返し噂されている。株価はここ一年で倍増しているが、今後の業績拡大を織り込んでないとする見方も多い。
株価は129.70ドル、(前日比+2.17%)(現地9/5引け)。8/3の4〜6月期決算発表では売上高が前年同期比59.2%増の102.5百万ドル、純損益は116.4%増の47.2百万ドル、基本、希薄化後EPSは共に0.99ドルで前年同期の0.46ドルから上昇。材料の売上、ライセンス、ロイヤルティ収入ともすべて上向いた好決算だった。
2.フィットビット(FIT)[NYSE]
フィットビット(Fitbit Inc.)はサンフランシスコに拠点を置く米国のフィットネス製品メーカー。ウェラブル端末を含め、健康・フィットネス関連製品を65ヵ国で販売。運動に関するデータを分析するソフトウェアやアプリなども提供。主要製品はワイヤレス心拍計、睡眠計リストバンド、ワイヤレス多機能体重計など。日本でもフィットビッドバンドはアマゾン・ドット・コムなどから購入できる。
フィットビットバンドはアップルウォッチに競合するウェラブル端末だ。16年3月投入の「ブレーズ」はアプリが使えず不評だったが、10月1日発売予定のスマートウォッチ「Ionic」が話題を呼んでいる。ウェラブル端末成功のカギはスマホとの接続利用が可能かどうかである。新製品の価格は299.95ドル。Wifi仕様で音楽もダウンロードでき、アップル製品を持たない顧客にアピールするようデザインも工夫している。新製品がはたして株価低迷の起爆剤となるのか、投資家も見守っている。
株価は5.87ドル、(前日比-0.34% )(現地9/5引け)。8/2の4〜6月期決算発表では売上高が前年同期比39.8%減の353.3百万ドル、純損益は赤字58.2百万ドルと前年同期の6.3百万ドルから赤字転落、EPSは赤字0.25ドル、調整済EPSは赤字0.08ドルと奮わなかった。同社は前期1〜3月期よりリストラに着手していて利益を下押しした。全デバイスの総販売台数は3.4百万台と、前期比14%増だった。
<米国歳時記その1>
レイバー・デイと秋の到来
米国ではレイバー・デイ(連邦政府が祝日に定めた9月第1月曜日の「労働者の日」)の翌日から秋が始まるとされ、人の装も夏物から秋物に一斉に変わる。オフィスでは夏物のサンダル履きや白い服装のままでいると白い目で見られることになる。日本の10月の衣替えが1ヵ月前倒しになる感じだ。
筆者にとってこの時期になると思い出されるのが16年前のセプテンバー・イレブンだ。当時筆者の勤務していた日本の金融機関もニューヨーク貿易センタービルの高層階にあり、テロに巻き込まれた職場の上司と同僚の数名が落命された。前日に「また明日」とあいさつして職場を後にしたことが今生の別れ。
筆者は事情あってその日たまたま出社が遅れたため難を逃れたが、真っ青の空を背景に高層ビルから煙が立ち込める光景とともにあの日のことを忘れることはないだろう。今でも心の中で被災し亡くなった方々のご冥福をお祈りしている。
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