FOMCをこなし強い基調続く 〜アップル関連銘柄第3弾: 音響技術とアナログ半導体
9月に入ってからのダウ上昇をけん引しているのはキャタピラー、ボーイング、GEなどで世界的な景気良好のサイクルから素直に恩恵を受ける先ばかりである。警戒されたトランプ政権による中国との貿易摩擦も懸念されず、ボーイングなど中国市場向け事業拡大計画を試算する企業も少なくない。穏やかな利上げの方向が確認できた今回のFOMCを経て、投資家による企業業績拡大期待は途切れることなく続いていく模様だ。ほかに目立った個別の動きでは、金利上昇による利ザヤの改善を見込んで、足元でシティグループやJPモルガン・チェースなどの金融株が買われているほか、19日には携帯電話会社のスプリントとTモバイルの合併交渉開始が報道され、通信株が買われた。
あすなろも同様に経済成長を見込んだ株高が続くことを予想している。今週はアイフォーン・テンを発表したばかりのアップル関連銘柄第3弾として、音響、アナログ半導体から1銘柄ずつ紹介したい。
1.ドルビー・ラボラトリーズ(DLB)[NYSE]
ドルビー・ラボラトリーズ(Dolby Laboratories Inc.)はサンフランシスコに本拠を置き、映画制作、映画およびテレビ放送業界向けの音響・映像記録製品を設計、開発、製造する。デジタルシネマプロジェクター、デジタル3D製品、ブロードキャスト製品などを提供する。世界50カ国において独自の音響技術をライセンス提供するほか製品を販売する。映画館で目にするドルビー・システムも同社(ドルビー研究所)の開発によるもの。
株価は58.30ドル、(前日比+0.66%)(現地9/20引け)。アイフォーン8、アイフォーン・テンに同社のノイズ解消音響技術、「ドルビー・ビジョン」が搭載されるとの調査会社のレポートを受け、13日に7年振りの高値に上昇した。アップルTVや4Kテレビにも供給先を増やす見通しから業績について強気なアナリストが多い。
7/25の4〜6月期決算発表では、売上高が前年同期比10.1%増の305.7百万ドル、純利益は、19.5%増の76.0百万ドル。基本EPSは0.75ドル、希薄化後EPSは0.73ドルで前年同期のそれぞれ0.63ドル、0.62ドルから増加。
2.ブロードコム(AVGO) [NASDAQ]
ブロードコム(Broadcom Ltd.)は、カリフォルニア州サンノゼに本拠を置き、デジタル、アナログ半導体デバイスの開発者・サプライヤーに製品提供する。 同社のアプリケーションは、アイフォーンを始めとするスマートフォン、データネットワーキングおよび通信機器、エンタープライズ・ストレージおよびサーバ、ファクトリ・オートメーション、産業用設備に広く使用される。アナログ半導体業界の再編を受け、2016年にアバゴ・テクノロジー(Avago Technologies Ltd.)に買収され、同シンガポール持株会社の傘下にある。
同社のワイヤレス向け製品は売上の3割を占め、今後も拡大が期待される。調査会社によればアイフォーン新製品投入により、アイフォーン向け供給は4割増の見通し。3Dセンサーやワイヤレス充電に同社製品が使われている模様のため。
株価は242.91ドル、(前日比-2.74%)(現地9/20引け)。アイフォーン・テンの発表による材料出尽くしで足元は一旦売られているが、ワイヤレス分野での業績拡大を見込んで買い戻される可能性が大きい。8/24の5〜7月期決算発表では、売上高が前年同期比18%増の4,463百万ドル、純損益は481百万ドル(前年同期▲298百万ドルから黒転)、基本EPSは1.18ドル、希薄化後EPSは1.14ドル(前年同期はともに▲0.75ドル)。
<米国株豆知識その12>
米携帯電話市場について
スプリントとTモバイルの合併交渉開始に際し、米携帯電話市場について少々触れておく。市場は、AT&Tとベライゾンが2強としてそれぞれ30%強のシェアを占め、以下ソフトバンク(9984)の傘下にあるスプリントとドイツテレコム傘下のTモバイルがそれぞれ20%弱で第3、第4位を占める。
米国の通信・放送業界は政府ではなく独立行政機関のFCC(連邦通信委員会)の規制・監督下にある。FCCの設立は1934年にさかのぼり、1920年代にラジオ局が乱立し、電波が混信した反省から立法化された米国通信法に基づく。FCCによる新規周波数の割当や事業免許の入札は政府に莫大な歳入をもたらしている。2014年、FCCはスプリントによるTモバイル買収を独禁法に触れるとして許可しなかった。
今回報道されたスプリントとTモバイルの合併協議も最終的にはFCCによる認可が必要となる。ソフトバンク(9984)は米国の携帯事業に成長の機会をみており結末が待たれるところだ。
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