税制改革法案が可決、材料出尽くしに 〜エンタテインメント関連: カーニバル、ウォルト・ディズニー
20日は原油相場の続伸を受けてダウが100ドル上昇する場面もあったが、法案が19日深夜に上院で可決され、翌日下院で再可決されたことで材料出尽くし感が広まり、3指数とも小幅続落して引けた。アップル、フェイスブックなどが軟調だったほか、前日に引き続いて不動産、公益セクターが売られた。
個別では、19日にアップル、ビザ、ゴールドマン・サックスなどが売られ、一方、決算発表を好感したクルーズ船運航のカーニバルやレストランチェーンのオリーブガーデンなどを傘下に持つダーデン・レストランツが買われた。20日は好決算を発表したフェデックスが買われた。
尚、先週紹介したデータベースソフトのオラクルは、14日引け後の決算発表で売上高と利益は市場予想を上回ったが注目のクラウド事業の伸びと見込みが市場予想に届かず、15日は前日比で4%売られ、その後は小動き。
経済指標では19日発表の11月米住宅着工件数が前月改定値から3.3%増加した129万7千戸となった。20日発表の11月中古住宅販売件数は5.6%増の581万戸となり予想の0.9%増を大きく上回った(件数はいずれも年率換算)。両件数とも高水準で景気回復を印象付けた。
債券市場は税制改革案成立を目前に金利先高感が高まり、19日時点の10年債利回りは前日比2.97%増の2.463%まで上昇。翌20日には欧州での金利上昇と税制改革を織り込んで9か月振りとなる2.50%台を付けた。
米長期金利上昇を受けて為替はドル買い、円売りに振れやすい展開になっており、21日には日銀の金融緩和政策維持の発表もあり、日本市場でのドル円は113円台前半で取引されている。
あすなろでは、税制改革法案が可決したことによる利益確定売りをこなしつつ、米株の上昇は続くとみている。景気拡大が業績拡大に結びつくことで、足元で発表される決算内容も明るいものが多い。
今週は華やかな冬のホリデーシーズンにふさわしいエンタテインメントの分野から2銘柄を紹介したい。
1. カーニバル(CCL)[NYSE]
豪華客船の運航会社。北米、欧州、オーストラリア、アジアで「カーニバル・クルーズ・ラインズ」、「プリンセス・クルーズ」、「ホーランド・アメリカ・ライン」、「シーボーン」、「AIDAクルーズ」、「コスタ・クルーズ」、「キュナード」のブランド名でクルーズを催行。また、米アラスカ州とカナダのユーコン準州でアラスカクルーズ船を運航。
大型レジャー銘柄であるクルーズ船運航会社は、景気回復から客足が順調に伸びて業績好調なところが多い。カーニバルと競合するノルウェージアン・クルーズライン(NCLH)、ロイヤル・カリビアン(RCL)などもそろって株価の堅調が続いている。心配された9月のハリケーンやメキシコ地震の影響も限定的だった模様。来期18年について、新規に就航予定のクルーズをいくつか持ち、会社側では燃料費の上昇1%を上回る収益の伸び2.5%(為替の影響を除くベース)を予想。好調な来期見通しを好感して株価は上昇した。
株価は66.34ドル、(前日比-2.01%)(現地12/21引け)。12/19発表の17年度Q4(9〜11月)決算は、売上高が前年同期比8%増の4,259百万ドル、純利益は10%減の546百万ドル。EPSは基本、希薄化後ともに0.76ドルで前年同期のそれぞれ0.84ドル、0.83ドルから下落。増収だったが燃料費や販間費の上昇により利益は損なわれた。
2. ウォルト・ディズニー(DIS)[NYSE]
米国の総合エンタテインメント企業。メディア部門ではABCテレビとその他8局に加え、「ESPN」、「ABCファミリー」などのケーブルチャンネル、ESPNラジオネットワーク、ラジオ局35局を運営。リゾート部門はフロリダ州の「ディズニー・ワールド」、カリフォルニア州の「ディズニー・リゾート」を所有。劇場映画やDVDの制作も行う。
12/14に同業の21世紀フォックス(FOXA)の買収が報じられ、株価は上昇基調を回復した。買収によりフォックスの持つ「Xメン」、「アバター」などの有力コンテンツを取り込むことで、アマゾン・ドットコム、ネットフリックスなど動画配信勢の追撃を図る。AT&Tがタイムワーナーの買収を計画するなど米国ではメディア企業が買収の対象となるケースが多くみられる。ネット配信に押され、ミレニアル世代のテレビ離れが進んでいることも背景にある。ディズニーは「スター・ウォーズ」、「アナ雪」などと同様、新たに入手したコンテンツを映像配信のほかにもリゾートでの出し物やグッズ販売など複数の販路で利用できる強みを持つ。
株価は109.57ドル、(前日比-0.11%)(現地12/21引け)。11/9発表の17年度Q4(7〜9月)決算は、映画製作や劇場公開のスタジオ・エンタテインメント部門の不振が響いて売上高が前年同期比3%減の12,779百万ドル、純利益は1%減の1,747百万ドル。EPSは基本1.14ドル、希薄化後1.13ドルと前年同期のともに1.10ドルから上昇した。
<米国株豆知識その25>
税制改革法案の骨子
減税総額規模が10年で1.5兆ドルと試算される減税改革法案内容を今一度おさらいしておきたい。まず企業税制では、?18年より連邦法人税率が現行の35%から21%に引き下げられる。国、地方を合わせたベースの日本、ドイツ、フランスなどより低くなる。?海外子会社から配当を受け取る際の35%の課税は減速廃止される。?レパトリ課税。海外子会社が貯めた内部留保について、米国へ戻す際、8~15.5%が一度限りで課税される。?多国籍企業のグループ間取引には一部新税を課す。海外関連企業との取引量が多い製薬会社やIT企業にとっては今より不利となる。
次に個人税制では、?個人所得税の現行39.6%の最高税率が37%に引き下げられる。税区分は7段階で最低は10%。?税控除額の増枠。概算控除を倍増し、子育て世代の減税を図る。?その他遺産税の減税、医療保険制度改革法は一部廃止する。
税制改革は米国の18年のGDPを0.5ポイント押し上げる効果があると試算されている。翻って日本をみると高額所得者への増税、消費税引き上げが予定されているものの、経済を押し上げる効果にはつながらず、米国との税制の在り方の違いが浮き彫りになっているようだ。
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