不可解な売りが様々な憶測を呼ぶも市場は冷静を装う
昨日夕方の配信ができませんでしたので、本日は朝から失礼いたします。
まず、何よりも昨日の京都アニメーションの凄惨な事件がショッキングな出来事でした。
周辺の方々は怖い思いをされたことと思いますし、豊かな才能を持ちながらお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りします。また負傷された方々にもお見舞いを申し上げるとともに、1日も早い回復ができますことをお祈りしています。
さて、昨日の株式市場も大変でしたが日経平均は前日比▲422.94円安と2%近い下げとなり、市場観測では様々な憶測な飛び交っています。
5月初めの大陰線もショッキングでしたが、今回の下げ幅はそれを上回り投資家心理を急激に冷え込ませました。
市場分析の中にはおおよそ韓国との貿易に関する優遇措置の廃止をめぐる不透明感だとか米国株が天井圏から崩落することに対する警戒感だとか取って付けたような理由が並べ立てられていますが、最近のニュースから連想させられるのはドイツ銀行のエクイティ部門縮小および関連ファンドの解約売りが薄商いのマーケットに直撃したということです。
これも憶測の一つに過ぎないわけですが、そこからもう一段踏み込んでいくと、2008年リーマン・ショックが起きた前年のBNPパリバ・ショックが連想されやすいということです。
その他、昨日引け後のニュースでペルシャ湾を航行するタンカー護衛をめぐって有志連合が組まれる話やホルムズ海峡で米国の艦船がイランのドローンを撃墜した話など地政学リスクが緊迫してきていることを示唆する話などが流れてきています。
しかし、世界のマーケットを概観すると、極端に下げているのは日本株が突出して目立っており、メキシコなども下げましたが機関投資家のグローバルポジションには影響薄とみられます。
昨日の不可解な下げの主因は何だったのか?謎は深まります。
翻って、マーケットのリスク指標を確認してみますと、恐怖指数と呼ばれるボラティリティ・インデックスは跳ね上がっていますが、米国時間では株式相場が3日ぶりに反発して結局元に戻っています。
7/6の当コラムで紹介したリスク指標でジャンク債の動向を注視しておくのがよいと警鐘を鳴らしておりますが、これは確かにその後急落してリスク回避の動きを鮮明にしています。おそらくこの時にヘッジポジションをポートフォリオに組み込んでおいた投資家は意外な副産物として利益が出ていることでしょう。
次にこれが肝心、空売り比率ですが昨日は51.2%と実にマーケットの売買の半分以上が空売りで占められていたことを示しています。そうなると、上記のファンドの解約売りがどうのとかは影響力としてはそこまで大きいものでは無かったとみることができます。
また、価格規制なし(個人投資家など)の方の比率が11.3%と大きくなっておりますので、機関投資家というよりも個人投資家の売りがマーケットを押し下げた部分が大きいとみられます。
7/10にもこの価格規制なしの方の比率が高いのですが、その後は買い戻されてマーケットは反発しています。
では、本日以降のマーケットは反発するのかどうかに焦点が移ることになるかと思いますが、騰落レシオは「25日」の値で88.04をつけ、6/10以来の水準に落ちてきています。
さらにVIX指数などが再び低下し、Fear&Greed指数なども中立であることを考えますと、一過性の下げであったとみることができるかと思います。
もちろん、ここから上記のドイツ銀行の話やイランVS米国の対立激化に加え、わが国特有の下落要因の真相が明るみに出てきた場合など追加の悪材料があれば話は別ですが、とりあえずは昨日の不可解に下げ過ぎた分は一旦戻りを試すことになるかと思われます。
投資家としてしなければならないことは、ここで一緒にリバウンドを狙って全力買いだ!と飛びつくのではなく、まず、その戻りの強さを確認することです。
戻りが「3分の1戻し」なのか、「半値戻し」なのか、「全戻し」なのか、指数・個別株ともにこうした局面で買われてくるのかどうか一次反応を確かめておいて、次の二次反応で方向感をつかんでいくのが最善の投資判断と考えます。
直近ではすでに7月SQが“幻のSQ”となって弱含んできている以上、ポジションを縮小しておかなければならないことは是非もなしといったところですが、過度に恐怖感にかられて冷静な投資行動がとれなくなってしまうことは避けたいものです。
最新の裁定取引の動向をみましても買い残は4000億円台の歴史的にみても低水準に落ち込んでおり、マーケットの売り物は枯渇してきているのが現状です。
つまり、売り物が無ければ下げが加速するといった事態は想定されず、もし下げるとしたら投資家心理の悪化によりジリジリと資金が抜けていくようになるでしょう。
その一方で、日本市場では例の「年金2000万円問題」により触発された新たな投資家の新規参入や前期の配当分が還流してくるため、相場は下支えされるとみています。もちろん上記の空売り比率の異常な高さを見れば、この買い戻しも相場の下支え要因になるでしょう。
本日は21日に参院選を控えた週末ですので、手仕舞い売りが出やすくなることは当然かもしれませんが、こうした局面ではむやみやたらに狼狽する必要はなく、もちろん蛮勇で強気になる必要もありません。
粛々と市場環境の悪化や悪材料にも動じない銘柄の動向を監視し、何よりも自身のポジションに偏りが無いか、次の勝負どころに備えは出来ているのかをチェックすることが最優先事項となります。
こうした地合いでは米国市場でもそうですが、“有事の金買い”が連想されやすいですので、個別株では住友金属鉱山(5713)や軍需関連の石川製作所(6208)などの動きにも目を光らせておきましょう。
ピンチはチャンス、株式投資の大原則は「安く買って高く売る」です。強気のマインドをしっかりと持って、日本企業の底力に投資してまいりましょう。
もちろんあすなろ投資顧問は動揺せず、市場環境の変化を皆様にお伝えしてまいりたいと思いますし、何か困りごとやご相談は常時承っております。
ご不明な点や投資に関するお悩みなどがあれば、気兼ねなくお問い合わせください。
それでは本日も「上げに浮かれず、下げに怯えず」で株式市場と向き合ってまいりましょう。
【 相 場 の 格 言 】
『人も株も孤独に耐え己を磨いてこそ飛躍する』
【本日ご紹介した銘柄】
住友金属鉱山(5713)
石川製作所(6208)
執筆者:加藤あきら
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