Q3決算発表控え上昇一服 〜eコマース戦略光る:ウォルマート、ドミノ・ピザ
今週発表予定の経済指標では金曜発表の9月の消費者物価指数の伸びが注目されている。市場予想(前月比)は0.6%、コア指数0.2%。水曜日に公開されたFRBの9月の議事録にはサプライズはなく、市場コンセンサスの12月追加利上げに変更はない。
S&P500種のセクター別の動きでは小売り大手ウォルマートや日用品・医薬品大手のジョンソン・エンド・ジョンソンといったディフェンシブ銘柄が買われている反面、減配が予想されるGEの影響で工業株が安い。12日にはシティグループやJPモルガン・チェースなど金融株の決算が予定されているが、取引高の減少から軟調になるとの見方が多い。またハリケーンの影響を受けてトラベラーズやAIGなどの保険銘柄は25%減益になると予想されている。
10日発表の国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しは、世界全体について17年の見通しを3.6%、18年を3.7%とし、前回見通しからそれぞれ0.1ポイント引き上げた。地域別では米国が17年に2.2%、18年に2.3%の成長を見通しているが、「資本」「生産」「労働力」で構成される潜在成長率については生産性の伸びが弱く1.8%とし、トランプ政権の掲げる3.0%を大きく下回っている。ユーロ圏については一部債務問題が残るものの、輸出が持ち直し、域内需要が復活することで17年2.1%、18年1.9%と0.2ポイントずつ引き上げた。一方、英国はブレグジットが災いして前回7月に0.3ポイント引き下げたのを据え置き、17年1.7%、18年1.5%としている。また、中国について拡張的な政策維持を前提に17年6.8%、18年6.5%とそれぞれ0.1%引き上げ、新興国の株式市場に朗報となっている。
債券市場は今週に入ってやや持ち直し、10年債利回りは2.3%台で推移している。ドル円も113円台からは一服し、112円台半ば以降で推移しているが、輸出企業に恩恵をもたらすドル高基調は変わらず日経平均にプラス材料となっている。
あすなろでは政治リスクからの短期的な調整に注意しつつも引き続き経済成長を見込んだ株高が続くことを予想している。今週は小売りのセクターから独自の戦略で業容拡大を図る2銘柄を紹介する。
1.ウォルマート・ストアズ(WMT)[NYSE]
ウォルマート・ストアズは世界最大のスーパーマーケット。米国50州とプエルトリコでディスカウントストア、スーパーセンター(食料品併売、平均面積18万2,000平方フィート)、ネイバーフッドマーケット(スーパーマーケット)のほか、会員制の大型ディスカウントショップ「サムズクラブ」を運営。また、26カ国で小売店やレストランを展開中。
16年9月に新興ネット通販のジェイ・ドットコムを買収し、トップをeコマース部門のCEOに据えてテコ入れを図った。10日、機関投資家向け説明会で来期(19年1月通期)のeコマース(インターネットを通じた販売)の伸びを40%とし、同時に200億ドル枠の自社株買いプログラムの承認を発表。業容拡大への期待が株価への支援材料となっている。
株価は86.10ドル、(前日比+0.43%)(現地10/12引け)。8/17発表のQ2(5〜7月期)決算は、売上高が前年同期比2.1%増の123,355百万ドル、純利益は負債の償却を計上したため23.2%減の2,899百万ドル。EPSは基本、希薄化後ともに0.96ドル、(前年同期はともに1.21ドル)。米国の既存店売上高は1.8%増。eコマースの伸びは60%と2ケタだが、全体に占める割合は不明。
2.ドミノ・ピザ(DPZ)[NYSE]
ドミノ・ピザはミシガン州に本拠を置く米国の宅配ピザチェーン会社。直営及び、フランチャイズ経営を行う。2、3種類の生地から選択できる主力のピザの他、パスタ、サンドイッチ、スナック、各種ソフトドリンクやデザートなど提供。米国全ての州、また、70カ国以上の国で事業を展開。
フェイスブック、ツイッターのほか携帯上で作動するモバイルアプリを積極投入し、デジタル利用者向けに特典を設けるなど若者にターゲットを絞った攻勢をかけている。
株価は201.03ドル、(前日比-3.92%)(現地10/12引け)。7/25発表のQ2(4〜6月期)決算は、売上高が前年同期比14.8増の628.6百万ドル、純利益は33.5%増の65.7百万ドル。希薄化後EPSは1.32ドル(前年同期の0.98ドルから上昇)。既存店売上高は国内9.5%増、海外2.6%増。現地11/12にQ3決算発表予定。決算内容が良ければ7月の高値圏をトライしに行く勢いがある。
<米国株豆知識その15>
ウォルマートの新戦略
店舗展開型の小売りが年率2〜3%成長なのに対し、eコマースの伸びは15%以上と言われている。従来型からeコマースへと小売業のパラダイムシフトが進んでいるとはいえ、米国の小売り全体に占めるeコマースは8.5%と1割に満たない。eコマース最大手のアマゾン・ドットコムの売上高はスーパーマーケット最大手のウォルマートの3割である。アマゾン・ドットコムが高級食材のホールフーズを買収したことに見られるように、生鮮食料品はeコマースの最後の牙城とみられている。
EDLP「エブリディ・ロープライス」で有名なウォルマートは全米に広がる実店舗の強みを生かし、会社帰りにオンラインで購入した商品を実店舗のほか配送センターでピックアップし、ディスカウントを受けるサービスや、仕事の引けた従業員に配送を頼むシステムを導入。あの手この手で生鮮食料品購入の分野で再び他より先んじようとしており、今後の業績への反映が期待される。
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