ダウ23000ドル突破 〜デジタル決済:ビザ、ペイパル・ホールディングス
個別の動きで目立ったものは、17日に医薬品のジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)や医療保険のユナイテッドヘルス(UNH)が通期見通しを上方修正し上昇。一方、動画配信サービスのネットフリックス(NFLX)は16日引け後に好決算を発表したものの、独自コンテンツへの大規模な投資懸念や、利益確定売りに押されて売られた。18日には好決算を発表したIBMが10%高に買われたほか、長期金利の上昇からシティグループ、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスなどの金融関連株が買われ、ダウの上昇を後押しした。米株高を受けたリスクオンの資金が日本にも流入し、日本の株式市場の連騰の背景になっている。
2018年2月に任期切れとなるイエレンFRB議長の後任を巡る人事が話題に上り始めている。トランプ大統領は11月初めのアジア諸国歴訪前に人事を決定すると言っている。候補者は利上げを支持するタカ派とハト派に分かれ、パウエルFRB理事、元理事のウォルシュ氏、スタンフォード大のテイラー教授が有力である。テイラー教授は成長率とインフレ率から政策金利を決める「テイラー・ルール」の考案者でタカ派だが大統領の好感度が高いと報道されたため、足元でドル買い優勢の背景の一つとなっている。
投資家のリスクオン姿勢から低コストで借りられる円を売ってドルを買う動きが続いている。ドル円は113円台近辺で推移し、輸出企業に恩恵をもたらすドル高基調は日経平均にとって追い風だ。債券市場は今週に入り、10年債利回りはFRB人事を巡って2.3%を一時割り込む場面もあったが、2.3%台前半で推移している。
あすなろでは政治リスクからの短期的な調整に注意しつつもひとまず良好なQ3決算発表をもとに株高が続くことを予想している。今週は経済拡大から素直に恩恵を受けるデジタル決済の分野から2銘柄を紹介する。以前(「あすなろ米株くらぶ8/6号」参照)に紹介したカード決済アプリのスクエア(SQ)も引き続き推奨したい。
1.ビザ(V)[NYSE]
「マスターカード」、「アメリカン・エキスプレス」を引き離すクレジットカード会社最大手。クレジットカード「Visa」、デビットカード、プリペイドカード、企業間取引の決済処理プラットフォーム、ATM網「PLUS」「Interlink」、電子決済、モバイル決済、リスク管理、カード発行処理、請求内容照合、顧客ロイヤルティープログラム、不正・オンラインセキュリティー管理決済関連サービスを提供する。
「ビザカード」の米国での商品購入ベースでの市場シェアは50%を超える。スーパー大手のコストコや次に紹介する「ペイパル」との提携も奏功している。ビザの営業マージンは60%と高く、経済自体の伸びを凌ぐクレジットカード利用増加から最も素直に恩恵を受けよう。株価は17年通期EPSの30倍と安くはないが、良質、堅固なビジネスモデルを貫いていて長期投資にはもってこいの銘柄の一つであろう。
株価は107.02ドル、(前日比-0.72%)(現地10/19引け)。7/20発表のQ2(4〜6月期)決算は、売上高が欧州部門を決算に加えた経緯もあり前年同期比26%増の46億ドル、純利益は21億ドル。希薄化後EPSは0.86ドル。決済高の伸びは38%増の1.9兆ドル。17年通期の売上高の伸びを名目ドルベースで20%と見込む。
2.ペイパル・ホールディングス(PYPL)[NASDAQ]
ペイパル・ホールディングスは、カリフォルニア州サンノゼに本社のある電子決済サービス企業。事業者と顧客を代行して売買決済をインターネット上で行う。顧客の携帯電話やタブレット・ウェアラブル端末などに対応し、プラットフォーム名は「ペイパル」、「ペイパル・クレジット」など。
「ペイパル」はクレジットカードではない。スマホ上で小切手をやり取りするイメージだ。AさんがBさんに支払いをする場合、ペイパルのサイト上で資金送付先をBさんにして取引完結するとAさんの銀行口座から資金が引き落とされる仕組み。モバイル用アプリ「ベンモ」が好評でアップルの「アップルペイ」と競合する。中国のBaiduとも事業提携しており海外での利用拡大が期待できる。
株価は67.25ドル、(前日比-0.01%)(現地10/19引け)。7/26発表のQ2(4〜6月期)決算は、売上高が前年同期比18%増(為替の影響を除いて20%増)の31.4億ドル、純利益は27%増の4.1 億ドル。希薄化後EPSは27%増の0.34ドル。有効利用者数は8割増の650万人、取引件数は23%増の18億件。現地10/19にQ3決算発表予定。
<米国株豆知識その16>
伸びしろの大きいデジタル決済
調査会社によればeコマースは2017年の2.4兆ドルから2020年には4兆ドルに伸びるといわれており、デジタル決済会社にとって商機はまだまだ続く。デジタル決済会社は取引額の2.9%を顧客から徴収するほか、1取引当たり0.3ドルの手数料を販売者から徴収するとみられている。
小売商にとっていかに支払いシステムのエコ化を図るかが成否のポイントの一つだ。例えばアマゾンは1997年に「ワンクリック」(顧客がボタンを押すだけであらかじめ登録された支払い方法と配送先を指定できるしくみ)で特許をとり、売上を大きく伸ばした。この特許が今年9月に切れたためほかの小売商もこぞって同様のシステムを構築する模様。
デジタル決済は消費拡大からもっとも素直に恩恵をうける分野であり、株価の動きをみても年初来の上昇率はペイパルが50%、また、「あすなろ米株くらぶ8/6号」で取り上げたスクエアは90%とS&P500の平均10%と比較して大きく上回っている。
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