買い見送りで上値は重い 〜直近IPO銘柄:ロク、カーグルズ
国際エネルギー機関(IEA)による18年の需要見通しの引き下げを受けて原油価格が下落したこともあり、15日の主要3指数は2日続けて続落している。16日には小売世界最大手の米ウォルマート・ストアーズ(WMT)が売上好調を確認した決算を発表し、一時11%高の99.68ドルと過去最高値を更新してNYダウの反発に大きく寄与した。また、下院で税制改革法案が可決されたことも投資家心理を改善したものとみる。
15日発表の10月小売売上高は予想0.0%に対し、0.2%(自動車を除く場合0.1%)となりハリケーン復興需要が続いていることが示された。同日発表のインフレ指標となる10月消費者物価指数の伸びは2.0%、エネルギーと食品を除くコア指数は0.2%増と予想通り堅調な数字だった。続く16日は10月鉱工業生産などの経済指標が高い伸びを示したこともあり、12月FOMCでの年内利上げの後押し材料になりそうだ。
個別では13日にGEが投資家向け説明会で10〜12月期の配当を7〜9月期から半減させることを発表。期待された航空機リース事業の売却などリストラ策が出なかったことも加わり、同日の株価は7%下落した。13日にはブロードコムの買収提案に対しクアルコムが価格が低すぎるとして拒否したと報じられ、買収価格が引き上げられるとの思惑からクアルコムは3%上昇した。
地合いが良いこともあってM&A案件のニュースが増えており、先週10日には「モノポリー」や「ツイスター」で名を馳せた玩具メーカー大手のハズブロが「バービー人形」や「ミニカー」で有名なマテルに対して買収提案したと報じられ、13日にマテルは20%上昇、ハズブロも6%買われた。
15日には大手スーパーのターゲットがQ3 決算を発表、年末商戦を含むQ4期の利益見通しが低かったことで10%近く下落した。米国の小売りは感謝祭後の「ブラックフライデー」からクリスマスまで年末商戦に入る。インターネット戦略への舵取りがポイントとなるので16日のウォルマートやベストバイの決算発表が注目されよう。
債券市場は特に手がかりないなか10年債利回りは週初に2.4%を付けたあと15日時点で2.3%台前半で推移している。米金利低下を受け、ドル円も16日時点で早朝に112円台まで円高に振れたあとは113円台近辺で推移し、一気にドル高に振れにくい展開となっている。
あすなろでは年内の税制改革法案成立の進捗に注意しつつも引き続き経済回復を受けた穏やかな金利上昇の環境に変化なしとみて、株高が続くことを予想している。今週はここ3ヵ月間にIPOしたばかりのホットな2銘柄を紹介したい。
1. ロク(ROKU)[NASDAQ]
ロクはカリフォルニア州ロスガトスに本拠を置くストリーミングTV会社。登録ユーザーは独自のストリーミングプレーヤーかRokuTVを購入してもらい、ネットフリックスやアマゾン、Huluなどの番組をストリーミング視聴する。ほかに独自でスポーツ、音楽、ニュースのコンテンツも提供する。ビデオ広告やブランドスポンサーなどの広告も展開する。
2002年に会社設立、17年9月にIPO。米国では若者を中心にインターネット回線を使ったストリーミング方法での番組視聴が主流となりつつある。70ドル弱からの価格帯で4K仕様のプレーヤーやテレビを購入したあとは沢山の番組を視聴できる。事業モデルはハードウェアの販売よりマージンの高い広告やコンテンツ開発といったプラットフォーム事業(Q3の売上高比率46%)に収益のウェイトを置いている。ハードウェアではストリーミングTVのOSトップを目指すという。成長はまだ始まったばかりと言えよう。
株価は39.79ドル、(前日比+1.20%)(現地11/16引け)。Q3(7〜9月期)決算は、売上高が前年同期比40%増の124.8百万ドル、純損失は優先株のIPO後の時価評価見直しを計上し、赤字46.2万ドル。営業損失は▲7.9百万ドルとなり前年同期の▲14.1百万ドルからは改善。EPSは基本、希薄化後とも▲8.79ドル。
2. カーグルズ(CARG)[NASDAQ]
カーグルズはマサチューセッツ州ケンブリッジに本拠を置くオンライン自動車販売会社。インターネット上で、中古車、新車の売買サービスに従事する。独自のデータ分析や検索アルゴリズムなどを通じ、消費者にとって透明性の高い自動車売買マーケットを提供する。米国内で3万人弱のディーラーネットワークを所有し、カナダ、イギリス、ドイツでも事業を展開する。会社モットーは「世界中で一番透明性と信頼性の高い市場創設を目指す」。
2006年設立。17年10月にIPO。11/14発表のQ3(7〜9月)期決算では、2ケタ増収増益となり、業績の順調な伸びが確認できた。売上の内訳は9割が市場参加手数料、1割が広告料。登録ディラー数も26,553名と前年同期から37%増えた。ディラー1年あたり平均売上は16%増の11,526ドル。自動車に特化したネット販売会社は目新しく、流動性が高いので今後の事業拡大が期待出来よう。
株価は31.35ドル、(前日比+1.03%)(現地11/16引け)。Q3決算は、売上高が前年同期比56%増の83百万ドル、純利益は11%増の2.4百万ドル、基本、希薄化後EPSはともに0.02ドルで前年同期から変わらず。
<米国株豆知識その20>
ブラックフライデーとは?
11月第4木曜日の感謝祭明けの第4金曜日、今年は11月24日にあたる。アメリカの小売業者は週末にかけた3日間、一斉にセールを行うことで赤字だった店も黒字「ブラック」になると言われている。
ただし、もともとは61年頃、フィラデルフィアの警察が店舗の前の人だかりを目にして「ブラックフライデー」と名付けたことが始まりらしい。ブランド品などが一斉に大きく値引きされるため消費者は毎年心待ちにしている。日本では昨年あたりからトイザラスやイオンがブラックフライデーセールを開催しており、今年の盛り上がり度が注目される。
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