週末連載コラム:割安株の考察:Part.2 割安かどうかを見極めると共に期待リターン/リスクをも考慮する事こそ重要
割安かどうかの見極め「以上に」、期待リターン/リスクをも考慮する事こそが重要であるように考えます。
昨日のPart.1のコラム内で取り上げた日経平均構成銘柄のうち大手ゼネコン4社を再び取り上げてみましょう。
・大成建設(1801):足元の配当利回りおよそ3% 22業績/23業績予想の比較↓
・大林組(1802):足元の配当利回りおよそ4%超 22業績/23業績予想の比較↑
・清水建設(1803):足元の配当利回り3%割れ 22業績/23業績予想の比較↑
・鹿島建設(1812):足元の配当利回りおよそ3.8% 22業績/23業績予想の比較↓
配当利回りが一番高い大林は、今期業績も増益見込みです。
一方で、同じく業績好調の清水は、配当利回りが3%割れと、大林との単純比較ではやや見劣りする印象。
ここに、過去1年間ほどの株価推移を「指数化」したうえで「比較」してみると、株価水準的に最も「最下位」に位置しているのは清水。
ただ、ここで見極めが難しいのは、「最下位」が「割安」とは「決めつけ難い」点です。
加えて、土木に強い大林の方が目先の将来性が高いのか、首都圏や民間建築に強い清水の方が目先の収益性が高いのか、
という「トレンド感」をも同時に考慮する必要性がありましょう。
政府が推し進める「スマートシティ化」には、清水の方に分があるようにも思う一方で、大林は「建設DX」という面では一歩先んじているような印象です。
あれ?
こうなってくると、当初の「割安感」のお話からは随分とかけ離れてきたようにお感じになりませんか?
はい、そうなんです。
「割安感」という尺度は、投資判断の「はじめの一歩的な切り口」としては有効でありながら、それ以上に重要なのは、「割安株を買った時に期待できるリターン/リスクのおおまかな想定」だと存じます。
高配当銘柄群が仮に、全体相場との兼ね合いにより、「時系列的見地上の割安圏」にあるならば、それ以上の「株価の下落リスク」は限定的であろうと推察する事は充分可能でしょう。
もっと簡単に言えば、「割安」である事自体には疑いの余地はないと考えます。
一方で、「リターン」に目を向けると、足元でPER7.3倍近辺に位置している鹿島の株価は1513円(執筆時)。
これが仮にPER10倍水準まで買われると仮定すると2050円近辺と試算可能です。
鹿島の株価が実際に2050円近辺に位置していたのは、2018年5月が最後で、過去1年ほどの高値は1605円。
PER7倍付近で買っても、PER10倍に達する可能性は「数値的に低く時間軸的に遠い」という印象です。
ゆえに、「7倍~8倍程度の低PER水準で株価が停滞する可能性こそ大きい」と見ます。
ゆえに、「株価の値上がり益というリターンは大きく無かろう」という推察が成り立つ事となりましょう。
そろそろ結論に進みましょう。
「はじめの一歩的な切り口」として「割安株」を投資対象にしたとしても、業績推移や期待リターン等も併せて考察を進めると、「割安株の株価が上昇する可能性が高い」という結論を導き出すのは困難であるという印象です。
もう少し乱暴な言い方をするならば、「割安株は割安状態のまま放置される可能性も高い」と申し上げても宜しいかもしれません。
ここまで取り上げてきたゼネコン4社に関する私なりの見解を申し上げるのならば、「全体相場が大幅安となった際に、清水がPER9倍割れ水準、もしくは650円近辺まで連れ安するならば買い」とお伝えしたいと思います。
執筆:木村泰章
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