インフレが株式市場にとって追い風かも?
景況感も消費者心理も後退しているのに、物価は上昇しているわけですから「インフレ状態」です。
インフレは一般的に、2つの要因により大別されます。
「コストプッシュ型インフレ」と「ディマンドプル型インフレ」で、それぞれ、「悪いインフレ」と「良いインフレ」とも言われます。
コストプッシュ型インフレは、エネルギーを含む原材料の高騰や、供給力不足が原因で起こる賃金の上昇など、主に「コスト面の上昇」によって引き起こされるインフレで、企業の増益にはつながらず、結果として従業員の所得増にもつながらないケースが多いとされます。
現在の日本の状況は、このコストプッシュ型インフレの入口に位置しているものと申し上げても宜しいでしょう。
経済が活性化する好景気の中で、「需要が増えて」モノの値段が上がり、企業の利益が増えて従業員の所得増にもつながるような、ディマンドプル型インフレとは異なる、「悪いインフレ」と言えましょう。
しかしながら、「良い」にしろ「悪い」にそろ、「状態」的には結局のところ「インフレ」なのです。
ここで、インフレに弱い資産と、強い資産を確認しておきましょう。
・インフレに弱い資産……現金、預貯金、国内債券
・インフレに強い資産……株や投資信託といった有価証券、外国債券のような外貨建ての資産、不動産や金といった実物資産
インフレ局面では、モノやサービスの価格が上がってお金の価値が下がります。
ゆえに、現金や預貯金を持っているだけだと、お金の価値が物価上昇に追いつけず、目減りしてしまう事から「弱い」資産と目されているわけです。
お金の価値が下がる事を避けるために、では、「強い」資産へのシフトを考慮する人が増えます。
いわゆる、「貯蓄から投資へ」ですね。
他方、有価証券や外貨建ての資産、不動産や金に代表されるコモディティ=商品(実物資産)は、インフレに合わせて価格が上がる傾向が認められる為に「強い」資産と認識されているわけです。
しかしながら、インフレ局面でも、上掲のようなコストプッシュ型インフレ下では、「強い」と目される不動産を保有していても、景況感が悪く所得も増えていないので、需要も盛り上がらず、賃料の引き上げも難しい可能性が指摘されています。
実物資産、商品投資の中でも、エネルギー関連には(原油、ガソリン、天然ガスなど)地政学的リスクが意識されやすい局面で、穀物関連(小麦、トウモロコシなど)には世界的な異常気象のリスクが意識されます。
となると、実物資産の中でも低リスクで安定しているのは、消去法的に、貴金属関連(金、銀、プラチナなど)という事になりましょう。
実物資産であれば資産価値がゼロとはならず、インフレに合わせて値上がりする傾向があるため、インフレ対策として適していると言えます。
金、銀、プラチナなどの資産保有は、実物そのものを保有する以外に、ETF(上場投信)を通じて有価証券として保有する事も一般的です。
上掲のように株式はインフレに強いので、株式投資の対象銘柄としても、オルタナティブ(代替)的に実物資産寄りの性質を兼ね備えた銘柄があれば、なお理想的でしょう。
執筆:木村泰章
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